<NEOかわいい>が意味するところは、“かわいい”の概念をひっくり返すということ。しかし、その言葉がひとり歩きしてしまい、音楽よりもキャラクター優先になってしまう危うさも、注目されはじめた時期の彼女たちにはあったと思う。「実際には演奏もできないんじゃないか?」というあらぬ偏見の目もあっただろう。だが、一度でもライブを見れば実際の彼女たちの演奏力は大変なものだと圧倒されるし、奔放なキャラクターも含めて音でも言葉でもしっかりと伝えたいものを持っていることがはっきりとわかる。

「そもそも芯のあるアーティストがかっこいいと思ったし、自分たちもそうありたい。中途半端じゃなくそういうバンドになりたい。コンプレックスはもともとたくさん持ってるけど、そういう私たちにしかないところは逆に武器になるし、チャームポイントだし、そこを自信を持ってステージに立つことで、日本の空気感を変えられるんじゃないか、音楽があるからこそコンプレックスの気持ちは伝わるんじゃないかと思って、最初にコンセプトは決めた。グラミー賞取りたいともずっと言っていた。自分たちがどのレベルとかではなく。夢は全部言ってた」(ユウキ)

「ステージに立つのなら、誰しも目指せるものだし」(ユナ)

 18年には、2度目のアメリカツアーや、スーパーオーガニズムのサポートアクトとしてイギリス13都市を3週間にわたってツアーするという経験もした。スーパーオーガニズムは、ネット経由で結成された多国籍バンドで世界的に注目を集め、彼女たちも尊敬している。

「スーパーオーガニズムと一緒にまわった3週間は、海外でも一番興奮したかな。いままでもCHAIはわがままにやってきたけど、もっとわがままに、自分が自分らしくあるうえで、パンクの気持ちがまだ足りてないと思った。スーパーオーガニズムってまさにそんなバンドで、彼らは音楽の中でも自分たちの人間性も一切忘れていない。泣くときは泣くし、怒るときは怒る。それが美しくてかっこよかったから、まだまだCHAIももっと行けるんだって感じたし、刺激を受けたし、悔しい気持ちにもなった。あれは今までで一番濃い時間だった気がする」(ユウキ)

「心から好きなアーティスト(スーパーオーガニズム)に私たちのことをすごく褒めてもらえて、よりCHAIらしさに自信がもてた。このままでいいんだなとも思えたかな」(ユナ)

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