反面考える。

 売れっ子を出そうとするとプロダクションがギャラなど面倒な駆け引きしてくるな……そもそも売れっ子をキャスティングするとなるとスケジュールや競合を気にしなければいけない……共演NGもあるかもしれないぞ……大物すぎるクラスの方だと「こんなに長いセリフは覚えられない!」と怒り出す場合もある。そもそも時間に制約があり、納期に合わせて落とし所を見つけなければいけず、「これが絶対面白いんだ!」という確信とは違う平均点の出来を納めなければいけないと考えるようになるな……うん! 私ならそうなる!(そう考えるとクドカンって逆に凄い!)

 その時の「熱」は50度以下。半減している。私は状況を打破するためにテクニックや企画で切り抜けるのだろう。

「企画」は見やすさのための入れ物に過ぎない。ごく簡単に言えば額縁のようなものだ。はめれば作品になる。額縁ばかり凝りだし、体裁を整えたお手盛り企画はさまざまなエンタメにある。「これを撮りたいんだ!」「これを歌いたい!」「これが俺は笑える!」が一番。企画より、演者が本当に興奮しているものにはかなわないのだ。AVも企画モノだと全然興奮しない。

 この原稿の温度はこの時点で90度。よくこのぐらいで食い止められたとわれながら感動している。

※AERA 2019年3月25日号

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マキタスポーツ

マキタスポーツ

マキタスポーツ/1970年、山梨県生まれ。俳優、著述家、ミュージシャンなど多彩な顔を持つ。子供4人。スポーツ用品店だった実家の屋号を芸名に。著書に『すべてのJ-POPはパクリである。』ほか。映画「苦役列車」でブルーリボン賞新人賞受賞。近刊に『越境芸人』(東京ニュース通信社)。『決定版 一億総ツッコミ時代』(講談社文庫)発売中。

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