「墓を家単位で子孫が継承する仕組みは江戸時代以降に根付き、明治期に強化されました。高度経済成長期を終え、核家族や単身世帯が増えたいまも、『墓は家が守る』という慣習は残り、2000年代以降、ひずみが社会問題化してきました」

 供養する人がいない、子どもに負担をかけたくない。その受け皿になるのが、共同墓だ。

「1990年前後にはもやいの碑や志縁廟など、血縁に関係なく合葬する共同墓が作られはじめ、現在は公立の霊園にも広がっています」(山田さん)

 樹林型墓地のある前出の都立小平霊園にも、合葬墓がある。1号基は98年、2号基は08年に開設した。「問い合わせは年々増えている」と、管理事務所の船越稔充さんは言う。

「かつては合葬に不安や抵抗もあったかもしれませんが、広く認知されたということでしょう」

 墓がなくても、弔う気持ち、弔われたい気持ちが消えたわけではない。家単位で高価な墓を維持するのが現実的ではなくなっただけ。多彩な弔いの形態が現代社会の実情を表している。(編集部・澤志保)

※AERA 2019年3月25日号