監督自身もファイターですねと言うとおおらかに笑った。

「そうありたいと願ってるわ。どんなに邪悪なものと対峙することになっても、自分の道を歩き続ける人には、最上級の敬意を払えるから」

◎「マイ・ブックショップ」
英国ブッカー賞受賞作家の原作を映画化。エミリー・モーティマー、ビル・ナイらの名演も光る。公開中

■もう1本おすすめDVD 「あなたになら言える秘密のこと」

 イザベル・コイシェ監督がヒット作「死ぬまでにしたい10のこと」(2003年)に続き、女優サラ・ポーリーを起用した「あなたになら言える秘密のこと」(05年)。そのタイトルからは想像できない内容が深く重く、心に刻まれる。

 工場で働く孤独な女性ハンナ(サラ・ポーリー)は、上司に強制的に休暇を取らされる。所在なく困った彼女は海上の油田掘削所に看護師として赴き、火事で重傷を負ったジョゼフ(ティム・ロビンス)の看病をすることになる。失明状態にあるジョゼフの語りかけに無口なハンナは少しずつ、心を開いていく。だがジョゼフには人に言えない秘密があった。そしてハンナにもまた、大きな秘密があったのだ。

 終盤、明らかになるハンナの秘密はあまりに衝撃的だ。クロアチア人である彼女が、自国の紛争で負った心と体の傷。しかも決して過去の話ではなく、世界のほかの場所で、いまも続く悲劇でもある。「闘いと贖罪、希望」を自作の共通点に掲げたコイシェ監督の真骨頂ともいえる一本だ。

「あなたになら言える秘密のこと」
発売・販売元:松竹株式会社
価格1800円+税/DVD発売中
(ライター・中村千晶)

AERA 2019年3月25日号