三浦半島にあるベイサイド三浦浄苑からは、海と富士山がよく見える。プライベートビーチまで完備した霊園で、観光やレジャー帰りにお参りする人も多いという(撮影/写真部・大野洋介)
三浦半島にあるベイサイド三浦浄苑からは、海と富士山がよく見える。プライベートビーチまで完備した霊園で、観光やレジャー帰りにお参りする人も多いという(撮影/写真部・大野洋介)
図版=AERA 2019年3月25日号より
図版=AERA 2019年3月25日号より

 故人の思いを大切にした埋葬や、お参りしやすい墓へのニーズが高まっている。立派な墓石よりも思い出を。葬送の現場にも「モノからコト」への流れがあるようだ。

【ベイサイド三浦浄苑・熱海日金山霊園の情報はこちら】

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 見晴らしがよい高台に日がさんさんと降り注いでいた。海岸線の向こうに富士山がよく見える。絶景リゾートに来た気分になるが、ここは霊園だ。ベイサイド三浦浄苑(神奈川県)という。

 墓石にはさまざまな文字が刻まれ、故人の海への深い思い入れを感じさせるものもある。

「絶景ですよね。とても明るいし、こんな眠り方もあるのね」

 見学に訪れた自営業の女性(55)が言う。先祖の墓は四国にあるが、数年前に父を送った後、86歳の母親や自身の墓のことを考えはじめたばかりだ。

 霊園にはプライベートビーチがあり、お参りに来た家族が浜辺でバーベキューや水遊びに興じることも多い。京急三崎口駅から車で20分ほどの距離に位置し、近隣に三崎漁港や京急油壺マリンパークもある。

「お参り帰りに漁港でまぐろ料理を楽しみ、マリンパークに行くという話はよく聞きます」(ベイサイド三浦浄苑担当者)

 風光明媚(めいび)な土地に墓を建て、お参りする側は観光やレジャーを楽しむ「リゾート葬」が人気だ。簡略化した葬儀や墓じまいなどが注目される一方で、「行って楽しい場所」「思い出の土地」にお墓を作るという動きが生まれている。お墓の総合情報サイト「いいお墓」を運営する鎌倉新書の田中哲平さんは言う。

「盆暮れお正月お彼岸など、墓参りの時期は休暇期間と重なります。墓参りもしたいが、家族でレジャーも楽しみたい。思い入れある土地に眠りたい、といったニーズが背景にあります」

 ベイサイド三浦浄苑も、2002年の開園当初は地元住民の問い合わせがほとんどだったが、この10年ほどで県外からの問い合わせが増えた。「海」や「富士山」といった検索ワードで調べてくる人も多い。

 リゾート葬は価格面でも魅力的だ。都心の霊園であれば「1平方メートルで300万円以上するところもざら」(田中さん)のなか、ベイサイド三浦浄苑は約115万円から区画がある。

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