一方のロシアは、トップ4人の戦績が拮抗したため選考が2月下旬までもつれこんだ。当初からほぼ内定していたのは、ザギトワとサモデュロワだ。

 ザギトワは、今季前半は五輪女王の勢いのまま、オーラの溢れる演技を続けていたが、ここ2戦はミスを連発。12月のロシア選手権は、雪のために飛行機が飛ばず公式練習に参加できないというハプニングもあり、総合5位。1月の欧州選手権はフリーでミスが相次ぎ2位だった。実力は十分あるため、ピークを調整できるかがカギだろう。

 ロシアで一番勢いがあるのはサモデュロワだ。今季シニアデビューしたばかりだが、エフゲニー・プルシェンコを育てたアレクセイ・ミーシンの秘蔵っ子の一人だ。ジャンプに力強さがあり、演技には自信が溢れる。欧州選手権はショート、フリーともにパーフェクトの演技で女王となった。

「世界選手権にむけて、もっと自分をプッシュしていきたい」

 と話している。

 最後の1枠をつかんだのは、メドベージェワ。今季はトロントに拠点を移しブライアン・オーサーに師事、羽生のチームメートになった。ジャンプのフォームやスケーティングの基礎からやり直したため、シーズン前半は苦戦が続いた。GPファイナル進出を逃し、12月のロシア選手権も7位。

 しかし最終選考会となる2月の国内選手権で優勝を果たした。今季はまだ未完成だが、能力を考えれば世界選手権で飛躍する可能性も高い。

 日本とロシアの戦い以外での注目は、四大陸選手権で2位になったカザフスタンのエリザベート・トゥルシンバエワ(19)だ。シニア女子では唯一、4回転に挑戦する。

 男女ともに世界最高峰の決戦を目に焼き付けたい。(ライター・野口美恵)

※AERA 2019年3月25日号より抜粋