CMやドラマ、映画への出演など、その損害額は100億円規模との報道もあるが定かではない (c)朝日新聞社
CMやドラマ、映画への出演など、その損害額は100億円規模との報道もあるが定かではない (c)朝日新聞社

 芸能人の薬物依存が発覚する度に感じる、この拭えない「違和感」の正体はいったい何だろうか──。

 3月12日、違法薬物コカインを使用した麻薬取締法違反容疑で逮捕された人気テクノユニット「電気グルーヴ」のメンバー・ピエール瀧(51、本名・瀧正則)容疑者。所属事務所「ソニー・ミュージックアーティスツ」の対応は早かった。逮捕の翌日、同ユニットの公式サイトにこんな一文が掲載された。

「この度、弊社所属タレントのピエール瀧が麻薬取締法違反の容疑で逮捕された件につきまして、関係各所の皆様、ファンの皆様へご迷惑とご心配をおかけしておりますことを深くお詫び申し上げます」

 そして、同事務所は当面の間、同ユニットの石野卓球氏のライブやテレビ出演を含む、全ての電気グルーヴの「CD・映像商品の出荷停止」「店頭在庫回収」「デジタル配信停止」を発表した。

 電気グルーヴは活動30周年を迎え全国ツアーの真っ最中だった。

 ここで気になるのは「ファンの皆様へご迷惑とご心配をおかけしております」という一文だ。無論、ツアーは中止となり、楽しみにしていたファンは無念だっただろう。けれども、瀧容疑者は「誰か」を傷つけたのだろうか?

 影響は音楽業界だけにとどまらなかった。瀧容疑者は、個性派俳優として現在放送中のNHK大河ドラマ「いだてん」をはじめ、数多くのテレビ、映画に出演していた。現在、こうした瀧容疑者が出演した番組や映画の「お蔵入り」が続々と決定している。ある大手テレビ局の編成担当はこう頭を悩ませる。

「主役級の大物俳優の不祥事も手痛いですが、脇を固める俳優の場合はもっと傷が深い。何しろ主役やヒロインとの絡みが多く、仮に登場回数は少なくても作品全体に与える影響は大きい。そうした俳優は出演数も多いので、それだけ打撃を被る作品が多いことを意味します」

 2月に女性への強制性交容疑で逮捕・起訴された新井浩文被告も名脇役として名をはせた。容疑者が関わったすべての作品を現在から過去に至るまで徹底して排除する。これは芸能という業界の慣習であり「自主規制」。法的根拠は何もない。業界の理屈を通すのであれば、もう「シン・ゴジラ」も「アウトレイジ最終章」も「木更津キャッツアイ」も見ることができない。

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