「原発ゼロ」への思いを語る小泉純一郎元首相(77)。「ウソとわかって黙っているわけにはいかない」と力を込めた(撮影/写真部・片山菜緒子)
「原発ゼロ」への思いを語る小泉純一郎元首相(77)。「ウソとわかって黙っているわけにはいかない」と力を込めた(撮影/写真部・片山菜緒子)
原発すでに9基が再稼働(AERA 2019年3月18日号より)
原発すでに9基が再稼働(AERA 2019年3月18日号より)

 東日本大震災から8年。現場で廃炉に向けて気の遠くなる作業が続く中、安倍政権下では再稼働が相次いでいる。小泉純一郎元首相は「『日本の原発は安全』はウソだった」と在任中の過ちを認め、現状に苦言を呈す。

【図を見る】原発すでに9基が再稼働

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──いま「安倍一強」の中で「原発ゼロ」は求心力を失い、「再稼働」も続いています。安倍晋三首相は原発をやめるつもりはなさそうです。

 なんでこんな夢のある政策に切り替えないのか、不思議でしょうがない。私は安倍さん本人に「(原発推進論者に)だまされているんだぞ」「だまされるなよ」と忠告したことがあったけど、苦笑するだけで何も答えない。そもそも自らトップセールスで海外に原発を売り込んでいる安倍さんがここで「原発ゼロ」と言ったら、また批判を浴びる。豹変した、と。しかし、君子豹変。「君子は豹変する」と言えばいいんだ。

──安倍首相を後継者として育ててきた小泉さんが言っても方針転換は無理ですか。

 無理だろうな。私が言っても聞かないんだから。どうしてこんな簡単なことがわからないのか、歯がゆくてしかたない。原発推進論者の話を信じている。

 安倍さんだけでなく、麻生(太郎)さんや森(喜朗)さんといった首相経験者にも「だまされているんだぞ」と言っても、反論はしないね。

──とはいえ、小泉さん自身、首相在任中(2001~06年)は「日本の原発は安全」と原発を推進する立場でした。

(原発推進論者の話を)信じていた。「日本にはほとんど資源がない」「石油や石炭を使ったらCO2が増えて地球温暖化が進んでしまい、それを避けるためには原発が必要なんです」などと説明されると、私は原子力技術なんてほとんどわからないから「なるほど、そうか」と信じてしまった。

 電力会社が言う「安全第一」というのもウソだった。「経営第一」「利益第一」だった。

──「推進」から「ゼロ」へ。このターニングポイントはどこだったのでしょう。

 一番大きかったのは、2011年3月11日の東日本大震災。地震、津波、そして福島第一原発のメルトダウン。いったいどうなっているんだと思った。

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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