カレーなどが一番分かりやすいが、辛い前提で、甘味を利かせているものぐらいなら誰でも認識出来ているだろう。音で言えば低音と高音を強めに設定しているということだ。

 渋みが感じられたらそれを即「不味い」と判断することなく、その個性から何故そういう味になったかを想像してみてほしい。背景を考えてみるのだ。また、辛いと塩(しょ)っぱいが近づくと味がハウリングする。これも知っていれば楽しいし、自分がいざ料理する時に役立つはずだ。

 更に、この視点を持てば、作り手がざっと好みで調整した音源ならぬ味源を手前で補正できる。古くは「足りないカレーにソースをかける」もそういう意味でしていたわけである。

 食に「ありえない!」を持ち込むのはつまらない。私は悪食かもしれない、が、味覚をイコライジングさせるから比較的不味いものに出会わなくて済む。「10分どん兵衛」の作者がそういうのだから皆さんも試してみてほしい。

AERA 2019年3月11日号

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マキタスポーツ

マキタスポーツ

マキタスポーツ/1970年、山梨県生まれ。俳優、著述家、ミュージシャンなど多彩な顔を持つ。子供4人。スポーツ用品店だった実家の屋号を芸名に。著書に『すべてのJ-POPはパクリである。』ほか。映画「苦役列車」でブルーリボン賞新人賞受賞。近刊に『越境芸人』(東京ニュース通信社)。『決定版 一億総ツッコミ時代』(講談社文庫)発売中。

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