Sarah L.Casanova/1965年、カナダ生まれ。91年マクドナルドカナダ入社。日本マクドナルド社長兼CEOを務め、3月27日に同社会長に就任 (c)朝日新聞社
Sarah L.Casanova/1965年、カナダ生まれ。91年マクドナルドカナダ入社。日本マクドナルド社長兼CEOを務め、3月27日に同社会長に就任 (c)朝日新聞社

 日本マクドナルドホールディングスのトップとして、客離れの危機を乗り越えてきた社長のサラ・カサノバさん。当時の思いや、日本の働く女性への印象などを聞いた。

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──日本マクドナルドホールディングス(HD)の社長に就いて5年がたちました。就任直後の2014年、取引先が使用期限切れ鶏肉を使っていた問題が起き、深刻な客離れが起きました。どんな思いでしたか。

 大変な日々でした。その国のお客様の声を聞くことを大事にしてきたので、その機会だと受け止めました。じつは、あの危機を脱するきっかけをくれたのは当時31歳の女性社員でした。ある日、私にメールをくれたのです。「組織の意思決定が遅い。従業員による対話集会を開くべきだ」と。複数の上司に訴えたのに、受け入れてもらえなかったそうです。

──社長にメールするのは、相当な勇気がいりますね。

 その通りです。でも「若いときの私だ」と思いました。そして「なんでも協力する」と伝えました。彼女は若い社員とチームを作って対話集会を開き、600人を集めました。そして「GO GEMBA(現場)」などのスローガンを作りました。彼女の粘り強さが、私たちを団結させてくれたのです。

 良いアイデアが生まれるのに役職や性別は関係ありません。だからこそ経営者は多様性のある組織を目指すべきなのです。

──日本の働く女性たちにどんな印象を持っていますか。

 夫や子ども、両親や同僚から頼られて忙しく、時間をやりくりしてマルチタスクをこなす、とても才能のある人たちです。でも多くの女性が「自信がないから管理職になりたくない」と言います。日本に限りませんが、女性は自分が完璧だと確認できるまで昇進を引き受けない傾向がありますね。上司はその人ができると思うから打診するのです。チャンスが来たら「イエス」と言ってください。

──世界経済フォーラムの男女格差の国別順位で、日本は149カ国中110位です。家事労働の負担が女性に偏りすぎていると思いませんか。

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