震災後の福島描く漫画、いま舞台化する意味 萩尾望都×倉田淳 (2/3) 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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震災後の福島描く漫画、いま舞台化する意味 萩尾望都×倉田淳

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萩尾望都(はぎお・もと、右):福岡県大牟田市出身。『ルルとミミ』でデビュー。2012年に少女漫画家として初の紫綬褒章を受章。手塚治虫文化賞、朝日賞など受賞多数/倉田淳(くらた・じゅん):東京都文京区出身。演劇集団「円」で芥川比呂志に師事。1985年に河内喜一朗とともに、男性だけの劇団スタジオライフを結成。脚本、演出を手がける(撮影/写真部・小原雄輝)

萩尾望都(はぎお・もと、右):福岡県大牟田市出身。『ルルとミミ』でデビュー。2012年に少女漫画家として初の紫綬褒章を受章。手塚治虫文化賞、朝日賞など受賞多数/倉田淳(くらた・じゅん):東京都文京区出身。演劇集団「円」で芥川比呂志に師事。1985年に河内喜一朗とともに、男性だけの劇団スタジオライフを結成。脚本、演出を手がける(撮影/写真部・小原雄輝)

「なのはな」の稽古風景。左から、船戸慎二、倉本徹、仲原裕之、宇佐見輝。東京公演は東京芸術劇場で3月10日まで。大阪公演はABCホールで4月12~13日(写真:劇団スタジオライフ提供)

「なのはな」の稽古風景。左から、船戸慎二、倉本徹、仲原裕之、宇佐見輝。東京公演は東京芸術劇場で3月10日まで。大阪公演はABCホールで4月12~13日(写真:劇団スタジオライフ提供)

チェルノブイリの少女が福島の少女に、菜の花の種まき機を手渡す。『なのはな』の大事な一場面だ (c)萩尾望都/小学館

チェルノブイリの少女が福島の少女に、菜の花の種まき機を手渡す。『なのはな』の大事な一場面だ (c)萩尾望都/小学館

萩尾:文明なんてあっという間に崩壊してしまう、世界の終わりかと思いましたね。私も暗い気持ちでいたんですが、あるとき「チェルノブイリでは菜の花を植えて、土壌を回復している」という話を聞いて。菜の花は私が通った小学校の周りにもあって、春になると一面が黄色くなるくらい花が咲いていました。日本全国で咲く菜の花のきれいなイメージが未来への希望につながる気がして、物語に登場させたんです。

倉田:震災だけでも大変なのに、原発事故が起こって。いったいどうなるんだろうと思っていたときに読んで、癒やされたというか、甘えているようですが救われる気がしました。

──作品の中には、チェルノブイリの少女が出てきます。

萩尾:戦争や災害が起こると、一番被害を受けるのはいつでも子どもです。チェルノブイリの事故が起こったときも、驚いていろいろな本を読みました。すると被曝した子どもたちが発症して大変な目に遭っていることがわかった。責任もないのに、巻き込まれた子どもたちにとっては本当に災難なことです。だから福島の原発事故が起こったときにも「子どもはこれからどうなるんだろう」と、気になって。チェルノブイリが最後ではなく、福島でも起こってしまった。そこで物語の中で、それぞれの土地で暮らす少女を出会わせることにしました。

倉田:ずっと「東京にいた自分には表現する資格がないんじゃないか」と考えていたところがあります。自分が手がけて良いのだろうか、と。『なのはな』を読んでいると、舞台のイメージが浮かんでくるんですが、最初は決心がつきませんでした。ただここ数年、日本で毎年のように災害が起こるようになり、20年に東京オリンピックが開催されると、震災の記憶も原発事故も、風化するかもしれない。それならば今年、上演しようと思ったんです。

萩尾:描いている間も、福島に関する記事を読んでいましたし、住んでいた人たちの暮らしがどうなっているのかを知ると、もう悲しくて悲しくて。普段、作品を描くときには物語と客観的な距離をとるのが習慣になっているのですが、この頃は、福島の話をするだけで泣けてしまうくらいでした。だから、自分にとっても、お祓いをするように、作品として描かなくてはいけない、という気持ちがありました。


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