「払われた多くの犠牲は、一時の行為や言葉によってあがなえるものではなく、一人一人、この地に心を寄せ続けていくことをおいて考えられません」

 その6年後に「忘れてはならない4つの日」を語られ、その8年後に平成が始まった。陛下と美智子さまは昨年3月までに11回、沖縄を訪問している。

 陛下の学習院時代の同級生だった元共同通信記者、橋本明さんは著書『平成皇室論』の中で、「戦争を弔う旅」と被災地訪問に臨むお二人の姿を「平成流の凄み」と表現した。

 昭和の時代から「戦争」をテーマとし、沖縄に心を寄せ続けた。平成になって増えた災害では、いち早く被災地に駆けつけた。汗を拭うこともなく、戦争体験者の話を聞くお二人。膝を折って、被災者を励ますお二人。橋本さんはその姿から「凄み」を感じ取った。

 4月末、平成が終わる。皇太子さま(59)と雅子さま(55)による新しい時代が始まる。

 私が生まれたのは皇太子さまの1年後、雅子さまの2年前、つまり同世代だ。その立場から勝手に拝察するのだが、お二人が何をもって「凄み」とされるのか、とても難しいと思う。

 皇太子さまは2月23日、59歳を迎えるにあたって、「新たな時代に臨む決意」を尋ねられ、このように答えた。

「私が長年携わってきました『水』問題についても、そのことを切り口に、豊かさや防災など、国民生活の安定と発展について考えを巡らせることもできると思います」

 学生時代からの研究分野に自信をにじませた答えではある。が、陛下と美智子さまの「戦争」に比べると、やはり迫力に欠ける。そう思うのは私だけではないだろう。だが、皇太子さまに限った問題ではない。同世代として思うのだが、そういう世代なのだ。

 陛下と美智子さまのテーマ探しを「成功例」に、どういうテーマが次の世代にふさわしいか考えてみる。

「戦争」が起きたのは、昭和。つまり、一つ前の「負の遺産」をテーマにした。疎開を経験しているお二人だから、リアリティーがあり、説得力となる。さらに戦争の悲惨さ、むなしさ、平和の大切さは、誰もが同意する。

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