「自覚症状はまったくありませんでした。乳がんと診断され後に自分で触診しましたが、それでもしこりはわかりませんでした」

 女性は乳がんが発見された前年にも、乳房専用のレントゲン検査であるマンモグラフィー検査を受けていたが、異常はなかった。1年に1回、必ず人間ドックを受けていたことで早期発見につながったが、検診はどの程度のペースで受ければいいのか。富永さんは1年に1回のペースを推奨する。

「がん細胞の数が2倍になるのにかかる時間『ダブリング・タイム』は、乳がんでは長く、1年未満では見つからない可能性もある。ただ、2年に1度の検診だと、わきの下のリンパ節に転移するまで進行する恐れがあります。乳がんは基本的には40代以上のがんですが、不妊治療などでホルモン剤を使用した経験があったり、ピルの服用経験があったりする人は、30代からでも乳がん検診を受けることをお勧めします」(富永さん)

 検診による被曝などの不利益もあり、若年世代で積極的に検診を受けることは考慮が必要だが、二親等内に2人以上、乳がんか卵巣がんに罹患した親族がいれば、早期の検診が必要だ。

「遺伝性の乳がんは逆に若い時期に発生しやすい。家族に罹患歴がある人は25歳くらいから検診を受けてほしい」(同)

(編集部・澤田晃宏)

AERA 2019年3月11日号より抜粋