「進行が進むにつれ、食べ物や飲み物がしみたり、舌のつけ根まで進行すると、最悪、声が出なくなったりします。ただ、口の中は目で確認できますし、口腔がんの原因は口の中を不衛生にするなど、後天的な傷によるもの。自分で予防もできますし、歯科に定期的に行くなどし、早期発見できるはずです」(同)

 口腔がんの場合、腫瘍の大きさが2センチ未満でステージ1になり、4センチ以上は進行がんになる。ステージ1の5年生存率が95%であることを考えると、早期に発見しておきたい。

 神奈川県の50代の男性は7年前、舌がんと診断された。最初に口内炎を見つけたが、腫れているわけでもなく、市販の軟膏を塗れば治ると思っていた。

 しかし、口内炎はなくならず、次第に痛みを感じるようになり、近所の内科に飛び込んだ。その後も耳鼻科、咽喉科、歯科と足を運ぶが、どこも薬で様子を見てくださいという対応で、よくはならなかった。男性はこう話す。

「口の中にがんができるなんて思いもしなかった。原因がわからず病院を転々としたが、病院の先生さえがんを疑わなかった」

 気になる口内炎などができた場合、どうすればいいのだろうか。都内の歯科開業医はこんな現実を口にした。

「口腔粘膜の教育を受けている歯医者に行くべきですが、口腔粘膜を見ても保険点数にならない。彼らがどこまで口腔がんと向き合ってくれるのか。そこにはまだ意識の差があります」

 がんを疑うなら、自分から医師に訴えることが大事だ。(編集部・澤田晃宏)

AERA 2019年3月11日号より抜粋