公聴会はちょうど、トランプ大統領がハノイで金委員長との初日の会談日程を終えようとしていたころに始まった。大統領の元懐刀の爆弾発言が出るとあって、米メディアの関心は、米朝首脳会談を差し置いて、公聴会一色となった。

「10年以上にわたり彼のそばで仕事をしてきた私は、彼のことをよく知っている」と強調したコーエン被告は、トランプ大統領について、こう説明した。

「トランプ氏はなぞの人間だ。複雑で、いい所よりも圧倒的に悪い部分が勝り、大統領就任後は最悪となった。優しくはないが、優しさを装うことができる。気前よく見えてそうではない。忠実さを演じることも可能だが、基本的に不誠実だ」

「ドナルド・トランプは、この国を偉大にするためではなく、自分のブランドを偉大にするために大統領選に出た。国を率いたいという願望も意思もなく、富と権力を築き上げるために自分を売り込みたいだけだ」

 そんな「トランプ氏を守るため」に「違法行為の隠蔽(いんぺい)に加担した」というコーエン被告は、自身の行為を「恥じている」と謝罪し、国のためにも「本当のトランプ氏を知ってもらいたい」と発言。不法行為の中身についても、合理的な推測も交えながら詳細に説明した。

 16年の大統領選で民主党のクリントン元国務長官のメールなどがロシアにハッキングされ、内部告発サイト・ウィキリークスで暴露された選挙妨害について、トランプ氏は事前に「知っていた」。トランプ氏は、長男がロシア側と米ニューヨークのトランプタワーで面会をセットしたことの報告を受けていた可能性も高いという。

「トランプ氏の認識や了解なしでは何も物事が動かないことは私がよく知っている。特に選挙キャンペーンではそうだった」

 マラー特別検察官による捜査が最終盤を迎えているとされるロシア疑惑に直結することで、トランプ大統領が米朝首脳会談に集中できないのは仕方がない。ただ、コーエン被告は、トランプ大統領とロシアに選挙妨害の共謀があったかどうかについては「直接的な証拠は持っていない」とし、あくまでも臆測の範囲内で「疑いはある」と述べるにとどめた。

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