2月27、28両日にベトナム・ハノイで開かれた米朝首脳会談は、何の合意も得られないまま完全な不発に終わった。その間の米国では、トランプ大統領の懐刀だった元顧問弁護士が全国中継で大統領の「悪行」の数々を告白。トランプ大統領にとっていいことがなかったこの2日間が、自身にとって、さらに深刻な悪夢の始まりになる可能性がある。
【写真】10年以上にわたりトランプ氏の顧問弁護士を務めたマイケル・コーエン被告
「非常に生産的な時間だった。金正恩(キム・ジョンウン)氏は隅に置けない大した人物で、われわれの関係はとても強いと思っている」
2日間の米朝首脳会談を終えたトランプ大統領は28日午後、各国メディアで満席となったハノイでの記者会見で、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長との信頼関係をどこまでも強調した。それでも交渉は決裂。ゼロ合意の原因は、経済制裁の全面解除を求めてきた北朝鮮にあると主張した。
北朝鮮における連絡事務所開設や、休戦状態にある朝鮮戦争の終戦宣言などを用意していたとみられる米国だが、「われわれの求めに対し、金委員長の準備ができていなかった」(ポンペオ米国務長官)。
その約10時間後の3月1日午前0時、北朝鮮の李容浩(リヨンホ)外相らが、極めてまれな記者会見をハノイで行い、トランプ大統領に反論した。
「要求したのは全面的な制裁解除ではない。一部だった」
会見によると、北朝鮮は、核実験や大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射の永久停止に加え、寧辺(ヨンビョン)の核施設の完全放棄などを提案した。見返りに求めた経済制裁の解除は人民生活などにかかわる一部だけだったという。準備ができていなかったのは米国だとし、今後の交渉に対する金委員長の意欲が失われる懸念さえも表明した。
食い違う両国の主張だが、明らかに言えるのは、首脳会談が失敗に終わったことだ。出たとこ勝負の首脳会談で、事前の調整不足は否めない。それでも合意寸前まで行き、いきなり席を立ったトランプ大統領にとって、とても外交交渉に集中できない、ゆゆしき事態が、不在中の母国で起きていた。
「トランプ氏は、人種差別主義者で、詐欺師で、ペテン師だ」
2006年から10年以上にわたりトランプ氏の顧問弁護士を務めたマイケル・コーエン被告が2月27日、米議会下院の公聴会で、全米にテレビ中継される中、トランプ大統領の人間性や「悪行」の数々を証言した。コーエン被告は、脱税や議会での偽証、選挙資金法違反などの罪で禁錮3年の実刑判決を受け、5月に収監される。