三宅:心強いです。僕は普段、ストレッチをやるくらいでトレーニングはしていないんですが、海老蔵さんはかなりやっていらっしゃるんですよね?

海老蔵:私の場合は365日のうち千回くらい舞台に出ています。休憩はないですし、舞台に対して全力を注がなければならない。風邪も引けないし怪我もできない。ちょっとした不調も起こせないという時期がずっと続くわけです。そうするとやっぱり、毎日歯を磨くようにトレーニングもしない日はないですね。

三宅:稽古で海老蔵さんを見られるのは貴重な経験ですが、今回、海老蔵さんとご一緒させていただいている間にそのストイックな生活も学びたいと思っているんです。

海老蔵:私がストイックというより、ストイックな日常にいるだけですから(笑)。

三宅:それがすごいです。僕は今回、下人という重要な役をいただいているので、初日から千秋楽まで全うできるように頑張りたいです。ファンの皆さんの中には、まだ歌舞伎を見たことがない方がいらっしゃると思うので、この六本木歌舞伎を見に来ていただき、歌舞伎の世界を知っていただけたらなと思います。

海老蔵:我々歌舞伎俳優は、歌舞伎という伝統文化を守るために存在しています。ですが、私の中では新しいこともしながら守る、その両輪で進むことで伝統が守られるという発想です。そういった中で、六本木歌舞伎第三弾は、さらに多くの方々が歌舞伎という日本文化を知るチャンスが増えたなと思っています。歌舞伎俳優としたらこんなに嬉しいことはありません。いつもよりは多少精神性が強い世界になるかもしれませんが、歌舞伎独自の演出、エンターテインメント性を強調した作品をお見せしたいと思っています。

(フリーランス記者・坂口さゆり)

AERA 2019年3月4日号より抜粋