朝起きたときに口やのどが渇いていたら、「隠れ鼻づまり」かもしれない。仕事の効率やQOLが知らないうちに損なわれていることも(撮影/写真部・小山幸佑)
朝起きたときに口やのどが渇いていたら、「隠れ鼻づまり」かもしれない。仕事の効率やQOLが知らないうちに損なわれていることも(撮影/写真部・小山幸佑)
隠れ鼻づまりチェック表(AERA 2019年3月4日号より)
隠れ鼻づまりチェック表(AERA 2019年3月4日号より)
粘膜の腫れは時間帯で変化する(AERA 2019年3月4日号より)
粘膜の腫れは時間帯で変化する(AERA 2019年3月4日号より)

 たっぷり寝たはずなのに、疲れがとれないと感じることはないだろうか。専門医は、睡眠障害の最たる要因は「鼻づまりだ」と指摘する。寝ている間に出現する「隠れ鼻づまり」が、あなたの睡眠を妨げている。

【あなたは大丈夫?隠れ鼻づまりチェック表はこちら】

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 日中や夕方、必ずどこかで眠くなる。ライターの千葉はるかさん(42)にとって、かつてはそれが日常だった。移動中やふとした合間、常に少しでも眠れるすきま時間を探していた。勤め先のトイレでごく短い仮眠を取り、帰宅後すぐにベッドに倒れ込み数時間が経つこともしばしば。毎晩平均して6、7時間は眠っているのに、追加で睡眠が必要ということは、生来体力がなく疲れやすい体質なのだと思っていた。

「子どもの頃からすぐ寝てしまうので、家族からも『体が弱い』と思われていました。大人になってからは、眠気を抑えられないのは怠け者だからかもしれない、と後ろめたい気持ちもありました」(千葉さん)

 ところが、千葉さんの眠気の原因は「体の弱さ」ではなく、実は「鼻づまり」にあった。

 2016年、東京・京橋にある鼻の専門医院「鼻のクリニック東京」で診察を受けて、内視鏡写真とCTを撮ったところ、鼻内部の空気の通り道が普通の人の3分の1程度の幅しかなく、粘膜も慢性的に腫れていて、鼻炎があることがわかったのだ。

 確かに、子どもの頃の健康診断で毎年鼻に「所見あり」のマークがつき、耳鼻科ではアレルギー性鼻炎と言われていた。けれども、特に治療をすることはなかったし、日常生活に不便は感じていなかった。だが、思い当たることはあった。「鼻で大きく息を吸う」感覚がよくわからなかった。ピラティスをやっているときは、鼻から吸う息だけでは足りないから、口も開いて空気を足していた。呼吸は口でするのが当たり前だった。

 医師と相談し、鼻腔の腫れを起きにくくする日帰り手術を受けた。日常が変わったのに気づいたのは、しばらく後のことだ。

「あれほど悩まされた日中の眠気がウソみたいになくなっていました。家族からも『最近は日中寝ないね』と驚かれるくらい。以前といまとでは、モノクロとカラー映像くらい、生活の質が違います。頭がすっきりして、人生全体で活動できる時間が増えた感じです」

 眠気のあるときタイピングの精度が下がると自覚していたが、手術後は打ち損じが劇的に減った。仕事の効率も以前より上がったと実感した。

 千葉さんはしみじみ言う。

「いまにして思えば、以前の私はそれほど睡眠の質が低かったということですよね」

 千葉さんを診察した鼻のクリニック東京理事長で耳鼻科医の黄川田(きかわだ)徹医師(70)は言う。

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