また、日本国内の報道が韓国への露骨な反感を伝えているのに対し、韓国メディアの日本に対する論調は比較的落ち着いたものが目立つ。

 韓国の文喜相・国会議長が「慰安婦問題の解決には天皇の謝罪が必要」などと発言した問題では、韓国のテレビ、新聞、ウェブといったメディアの報道の多くが「バランスを欠いた発言だ」と冷静に報じた。

 韓国内でも最も保守色の強い「朝鮮日報」でさえ、徴用工に関する判決など一連の問題で韓国に対する報復措置を唱える日本の政治家たちの声には敵意さえにじんでいる、と伝えながらも、2月19日に配信したコラムの中で、鄭権鉉論説委員が韓国政府の最近の対応について次のように書いている。

「(徴用工問題で)韓国大法院判決に従い、韓国国内の日本企業に対して強制執行が実施された場合、おそらく、これまで経験したことのない相互報復措置が韓日両国の首を徐々に絞めていくことだろう」

 韓日両国の首を絞めるという表現には、文在寅政権の対応に一考を求める姿勢がにじむ。新聞各社の論調はいずれも「日本政府は一連の韓国に対する批判に自制的である必要がある」という文在寅大統領の発言と立場を一定評価しつつも、必ずしも感情的な日本たたき一辺倒にはなっていない。(編集部・中原一歩)

AERA 2019年3月4日号より抜粋