「双葉の人たちの状況は、どうしたってつらいものです。映画を撮るなら、それを超えるものを撮らないと、と思った」

 人の世には盆唄のように長い時間をかけて「継がれていくもの」が確実にある。そんな希望が映画に託されている。(ライター・中村千晶)

◎「盆唄」
作中に挟まるアニメーションには余貴美子、柄本明、村上淳らが声優として登場する。全国順次公開中。

■もう1本おすすめDVD 「ナビィの恋」

 中江裕司監督が1999年に発表した「ナビィの恋」。地元・沖縄ほか、全国で大ヒットし、その後の沖縄ブームの火付け役ともなった名作だ。

 祖父母の住む沖縄・粟国島に里帰りしたヒロイン(西田尚美)。ナビィおばぁ(平良とみ)とおじぃ(登川誠仁)、島にきた若者(村上淳)らと楽しく日々を過ごすが、おばぁの昔の恋人が島に戻ってきたことで大騒ぎになり──!?

 沖縄の名優・平良とみ、沖縄三線のレジェンド・登川誠仁らをキャストに、沖縄のあたたかさや力強さが、明るくおおらかに、じんと切なく描かれる。監督は次回作で、再び沖縄をテーマにする。

「でも基地問題とかじゃないですよ。庶民的なことを撮ると思います。沖縄を動かしてるのは“庶民”ですからね。例えば、僕が脚本考えながら歩いているとね、市場のおばちゃんに怒られるんです。『監督さん、道歩くときはニコニコしながら前向いて歩きなさい。下向いて歩いてるとみんな心配するよ』って。これ、大事なことなんですよ」

◎「ナビィの恋」
発売元・販売元:バンダイナムコアーツ
価格5000円+税/DVD発売中

(ライター・中村千晶)

AERA 2019年3月4日号