石原さんは映画にも、PVに感じたフレディの光と影がデリケートに表現されていたと話す。

「クイーンと同じ時代を過ごしたかった」と話すのは、神奈川県の女性(29)だ。7歳で彼らのヒット曲「キラー・クイーン」に衝撃を受けて以来のファンだが、すでにクイーンは活動休止状態。「曲から知ったので、初めて写真を見たときは、おっさん!と思った」と笑う。

 長年、どんなバンドなのかつかみかねていたが、映画を観て全体像と当時の空気が理解できた。今はクイーンの時代に比べて音楽が簡単に手に入る。夢中になれるミュージシャンは他にもいるのでは、と問うと、女性は「今の、特に日本の音楽には自由を感じにくくてさみしい」と答えた。

 取材を通して、フレディの没後にファンになった人たちからよく聞いたのが、「自由」の言葉だった。前出のシマさんは、昨今のクイーン人気を「窮屈な時代だから、自由への憧れもあるのでは」と指摘する。シマさんも70~80年代の洋楽ロックスターは楽しく描けるのだが、その後、隆盛となったビジュアル系バンドの漫画には苦労した。ロック界もショービジネスが確立したことで、イメージを重視するようになった。想像力を広げられる「隙間」は少なくなったのかもしれない。

「私が洋楽ロックスターをどう描いても許してくれる気がするのは、曲や行動で自由奔放に表現していた彼らのありのままを丸ごと愛しているから。人生は一度きり。私を含めてみんなも、もっとフレディのように周囲の目や意見を気にせず、好きなことをどんどん楽しんでいいんじゃないかな」(シマさん)

(ライター・角田奈穂子)

AERA 2019年3月4日号