稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。著書に『寂しい生活』『魂の退社』(いずれも東洋経済新報社)など。『もうレシピ本はいらない 人生を救う最強の食卓』(マガジンハウス)も刊行
稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。著書に『寂しい生活』『魂の退社』(いずれも東洋経済新報社)など。『もうレシピ本はいらない 人生を救う最強の食卓』(マガジンハウス)も刊行
我がベランダにて。並んで仲良く日光浴中の白菜たち。まるごとキャベツも同様に保存できますぞ(写真:本人提供)
我がベランダにて。並んで仲良く日光浴中の白菜たち。まるごとキャベツも同様に保存できますぞ(写真:本人提供)

 元朝日新聞記者でアフロヘア-がトレードマークの稲垣えみ子さんが「AERA」で連載する「アフロ画報」をお届けします。50歳を過ぎ、思い切って早期退職。新たな生活へと飛び出した日々に起こる出来事から、人とのふれあい、思い出などをつづります。

【写真】ベランダに並んで仲良く日光浴中の白菜たち

*  *  *

 白菜話を始めたら止まらなくなりました。つまり私は白菜が好きなのです。ちなみにあんなに立派な野菜がたくさん売られていたリヨンのマルシェでも白菜はついぞ見ず。白菜が食べられるのは日本で暮らす特権です。みなさんもっと白菜を大切に!と申し上げたい。

 みずみずしい食感とか歯ごたえとか、漬けても煮ても焼いても生でもなんでもいける多才ぶりとか、好きな理由を挙げればキリがないのですが、「安い」という要素も外せません。冬になると特大サイズが丸ごと100円とか200円とか。で、喜んで買って帰るとこれが重い! 手がちぎれそうになりつつそれがまたお得感を増す。

 でもそんな話をすると、よく言われるのが「あんな大きいの一個買って使い道に困らない?」ということです。

 なぬ? それは聞き逃せません。

 というのも、私が白菜を一個丸ごと買うのは安さの他にも重大な理由がありまして、丸ごとの白菜はビニールに包まれていないのです。以前書いたように、私「目指せプラごみゼロ運動」を一人勝手に展開しておりまして、しかしこれが簡単じゃなく、だってもうありとあらゆるものがプラに包まれ売られている。八百屋とて例外じゃない。ほぼすべての商品がプラ入り。しかしその中で貴重な例外が「丸ごと」の野菜なのです。つまりは、それを皆が買うかどうかはクジラの胃袋とも繋がる問題なのであります。

 一人暮らしですが全然平気。一番のコツはですね、買ってきたら縦に割って外に放置しておくこと。雨にさえ濡れなけりゃ何日ほったらかしても平気。私は四つに割りベランダのザルへ。冬の風と太陽の力でどんどん甘くなるんだよ。あとは、いつでも必要な分だけちぎって鍋でも味噌汁でも八宝菜でもサラダでも何にでも使えばオーケー。

 冷蔵庫に入れるから邪魔になる。ラップで包むと切り口から腐ってくるし。そう思うと冷蔵庫とプラはセットだな。しかも不合理。もはや冷蔵庫ライフの利点が思い出せない。

AERA 2019年2月25日号

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稲垣えみ子

稲垣えみ子

稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行

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