岩合光昭さん(68、右):1950年、東京都生まれ。動物写真家。79年『海からの手紙』で第5回木村伊兵衛写真賞を受賞。12年スタートの「岩合光昭の世界ネコ歩き」(NHK・BSプレミアム)が人気。フィクション映画の監督は本作が初/立川志の輔さん(65):1954年、富山県生まれ。落語家。劇団所属の後、83年に立川談志門下に入門。90年に第44回文化庁芸術祭賞演芸部門を受賞したほか、2015年には紫綬褒章受章。映画出演歴もあるが、主演は本作が初めて(撮影/片山菜緒子)
岩合光昭さん(68、右):1950年、東京都生まれ。動物写真家。79年『海からの手紙』で第5回木村伊兵衛写真賞を受賞。12年スタートの「岩合光昭の世界ネコ歩き」(NHK・BSプレミアム)が人気。フィクション映画の監督は本作が初/立川志の輔さん(65):1954年、富山県生まれ。落語家。劇団所属の後、83年に立川談志門下に入門。90年に第44回文化庁芸術祭賞演芸部門を受賞したほか、2015年には紫綬褒章受章。映画出演歴もあるが、主演は本作が初めて(撮影/片山菜緒子)
ベーコン(4)/2015年生まれ。キジトラ模様が印象的なアメリカンショートヘアの雄。映画「ねこあつめの家」(17年)やCMなどで活躍(撮影/片山菜緒子)
ベーコン(4)/2015年生まれ。キジトラ模様が印象的なアメリカンショートヘアの雄。映画「ねこあつめの家」(17年)やCMなどで活躍(撮影/片山菜緒子)
大吉(立川志の輔)と猫のタマ(ベーコン)の日々の暮らしをほのぼのと描く「ねことじいちゃん」(2月22日から全国公開)。原作はねこまき(ミューズワーク)の同名人気コミック。大吉の妻(田中裕子、写真下)、島でカフェを開く女性(柴咲コウ)、大吉の幼なじみの巌(小林薫)ら猫好きキャストが集合した (c)2018「ねことじいちゃん」製作委員会
大吉(立川志の輔)と猫のタマ(ベーコン)の日々の暮らしをほのぼのと描く「ねことじいちゃん」(2月22日から全国公開)。原作はねこまき(ミューズワーク)の同名人気コミック。大吉の妻(田中裕子、写真下)、島でカフェを開く女性(柴咲コウ)、大吉の幼なじみの巌(小林薫)ら猫好きキャストが集合した (c)2018「ねことじいちゃん」製作委員会

 動物写真家にしていまや世界的な「写真家」、岩合光昭さんが初監督した「ねことじいちゃん」。主演の落語家、立川志の輔さん、主演猫のベーコンを交え、猫にメロメロなおじさんたちの撮影話。

【可愛すぎるベーコンや映画の場面写真はこちら】

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 日本のとある島で暮らす70歳の大吉(立川志の輔)と飼い猫のタマ(ベーコン)。映画にはふたりの日々と島の人々の暮らしが、ほのぼの優しいタッチで描かれる。撮影ですっかり仲良くなったふたり。取材中もベーコンは師匠の前でのんびりくつろいでいる。

岩合光昭:ここまで動じない猫は珍しいでしょう? 100匹以上の猫をオーディションしたんですが、そこでベーコンに出会ったときから「この猫は絶対に大丈夫だ」って信頼できた。なにより志の輔師匠との息がぴったりでした。

立川志の輔:僕は猫はほぼ初心者だったから、今回監督に教わってゼロから付き合い始めたんです。タマは「膝の上でおとなしくしててくれ」というと、その通りにしてくれるんですよ。

 ――と、目尻を下げてベーコンをなでる師匠。が、やはり映画は初主演。戸惑いもあった。

志の輔:僕は人前に身をさらすと、なにかオチがないと落ち着かないんですよ。でも台本上、笑うところが一個もないんです。1時間40分、人前に出て「笑わなくって、大丈夫なんだろうか」って猛烈に心配になった。

岩合:大丈夫ですよ、って。

志の輔:そう、できあがってみて大丈夫なんだなあとわかったんですが。改めて落語家ってビョーキだなと思いました。

岩合:僕も監督って大変だなあとわかりました。美術さんに「お膳の上の、箸の置き場所はどうしたらいいですか?」と言われて「あ、監督ってそんなことも考えなきゃいけないんだ」って。

志の輔:当たり前ですよ!(笑)それに監督は猫とのコミュニケーションは抜群でしたけど、人とは、ね……。

岩合:ははは。

志の輔:監督の指示は、1度は聞きなおさないと理解できないことが多かった!

岩合:つい抽象化してしゃべっちゃうから、俳優さんたちにも「よくわかりません」って何度も言われちゃいました。師匠は「監督、頼むから宇宙語でしゃべるのはやめてくれ」。

志の輔:「猫の気持ちとしてはこうなので、それに沿うように演じてください」と言われてもねえ。でもキャストもスタッフもみんな猫が好きで「岩合さんの映画に協力したい!」という思いでつながっていた。

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