半年ほどの抗がん剤治療の後、仕事に復帰。通院し維持療法を行っていたが、再発し、骨髄移植を受けた。移植後、3年ほどで体力は回復し、現在はフルマラソンを完走するほどの健脚だ。

 15~39歳の思春期・若年成人層はAYA(Adolescent and Young Adult)世代と呼ばれる。名古屋医療センターの安田貴彦医師は言う。

「がんの罹患率や死亡率が最も低い世代で、これまで臨床研究は多くありませんでしたが、近年米国では増えてきています」

 AYA世代のALLの場合、成人型より小児型の抗がん剤治療を行ったほうが予後がよいとわかっている。大人と子どもでは耐えられる抗がん剤の量が違い、小児型治療のほうが強い抗がん剤を用いる。成人型の治療を行った場合の5年生存率は約5割だが、小児型の治療では約7割に上がった。白血病は5年再発がなければその後再発することは稀であり、「根治」とされるという。

「小児科と内科が協力し、治療にあたる病院も増えた」というのは、国立がん研究センター東病院の細野亜古医師だ。

 学業や仕事で活躍していた世代にとって、心的な葛藤も大きい。闘病生活に入らざるを得なかった悔しさがあり、長い治療にあたっては不安もわき起こる。

「白血病は治療をはじめて数カ月は仕事や学業を中断せざるを得ないため、社会的・精神的なサポートが大切です。周囲の支えはもちろん、同年代の患者と交流を持つピアサポートも活用できれば」(細野医師)

 前出の今田さんも闘病中の励みになったのは、「家族や友人らの応援」だった。

 池江選手は13日、<今の私の率直な気持ち>として、ツイッターを更新した。

<私は、神様は乗り越えられない試練は与えない、自分に乗り越えられない壁はないと思っています><私にとって競泳人生は大切なものです。ですが今は、完治を目指し、焦らず、周りの方々に支えて頂きながら戦っていきたいと思います>

(編集部・澤志保)

※AERA 2019年2月25日号