竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長
竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長
スポーツの試合から、学べることはたくさんあります(写真:gettyimages)
スポーツの試合から、学べることはたくさんあります(写真:gettyimages)

「コンビニ百里の道をゆく」は、49歳のローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。

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 バインコーチとの契約解消で話題を集めていますが、テニスの大坂なおみ選手の全豪オープン優勝は、日本中が感激しましたね。第2セットで一度は勝利に手が届きかけたのに逆転され、それでも気持ちを切り替え第3セットを制した試合は、圧巻でした。

 優勝後、歓喜の声を上げるのでなく、うずくまって何かをかみしめる大坂選手の姿は、とても印象的でした。想像できないほどの重圧の中で戦い、感情に支配されないように理性でコントロールしながら、最後の最後で勝利を引き寄せた。その瞬間、すべての重圧から解放されて「やっと終わった」という気持ちが表れていたように感じました。

 試合を見て、もう一つ思ったことがあります。それは、ギリギリの状況で勝負に勝つには、勝ち切る「クセ」が必要だということです。

 超一流のプロのスポーツ選手は、たとえ相手に大差をつけていても、圧倒的な差で勝ち切ることを徹底しているといいます。勝負が決まっているように見えても、選手の中では全然終わっていない。優位に立っていようとも常に100%の力を出し切って勝つ経験を重ねることが、ギリギリの局面で勝ち切る強さにつながると、体感的に理解しているのだと思います。

 これは、われわれのビジネスにも通じます。コンビニは毎日、売り上げという結果が出ます。雨が降ってお客さまの足が遠のき厳しい時もあれば、晴天が続いて好調な売り上げを維持できることもある。でも、そこで一喜一憂することに意味はありません。

 雨や雪が降ろうが、風が吹こうが、晴天続きだろうが、常に万全の準備をして100%の力で商売を続けられるか。この姿勢を持てるか否かが、厳しい局面で勝ち切れるか、負けてしまうかの分かれ目だと思います。常に勝ちにいく「クセ」をつけている人は、ギリギリでも勝ち切る胆力を持っています。大坂選手のようにとはいかないまでも、私たちも常に勝ち切る「クセ」をつけていきたいものです。

AERA 2019年2月25日号

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竹増貞信

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竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長

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