そこで、グラフィティが迷惑な「落書き」から「贈り物」になりうる新基準が発動中の東京近辺で、消してはいけないお宝作品を探してみた。

 約10年前から、世界のグラフィティアーティストを招聘し、そのプリント作品などの展覧会を開いている「ギャラリーかわまつ」(東京都千代田区)の川松涼さんはこう話す。

「昔は夜中にビルなどによじ登って、許可なしで作品を残していた作家も、有名になるとトラブルを避けて、許可を取った合法的な壁などに作品を描くことが多くなる。私もグラフィティアーティストを海外から招聘するときは、知り合いに声をかけて、壁などを提供してもらう手配をしています」

 もちろん大スターのバンクシーも、今は公共物など違法な場所に許可なしで描くことは、めったにないと言われている。ちなみに、グラフィティアーティストの場合、そうして提供された壁などに、短時間で作品を描き、写真を撮影して自身のホームページに掲載したら、創作活動は終了。あとは塗りつぶされようが、壊されようが、後追いしない作家がほとんどらしい。

 今や多くのグラフィティアーティストが、サインの代わりに真作認定の手段として使っているのが、こうした公式ホームページ。身近にある有名グラフィティを探すときにも、この公式ホームページが役に立つ。

 描かれた場所の住所が明記されていることもあるほか、グラフィティの作品写真は、通行人など周りの風景を入れたものも多い。電柱に書かれた住所やビル名などから場所を推察することもできる。

 大まかな場所が特定できたら、グーグルマップのストリートビューなどで所在を確認。最後は現地に出向いて、本当にあるか最終確認する。今回もグーグルマップでは見えるのに、現地に行ってみるとなくなっている作品がいくつか。数カ月前に前を通ったはずの「NOW IS FOREVER」と描かれた渋谷区神宮前の有名なグラフィティも、行ってみると工事現場になっていた。

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