AERA 2019年2月18日号より(撮影/写真部・片山菜緒子)
AERA 2019年2月18日号より(撮影/写真部・片山菜緒子)

 働き方改革で職場は会社だけではなくなり、勤務時間もバラバラに。柔軟になった一方で、日本企業の強みともいえる団結力が低下しつつある。取り戻すために、「朝礼」を注目され始めている。

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 大企業も朝礼に熱心に取り組んでいる。

 全国で160以上のスポーツクラブなどを運営するルネサンス(東京都墨田区)は25年以上前から「全体朝礼」を続ける。現在は月1回、30分ほどで、本社では会長、社長以下、約120人のスタッフが参加する。この様子を動画で収録し、全国のクラブに配信している。

 会長は主に業界内外の動向、社長は前月の重要事項とその月の方針を話す。その後、本社に異動してきた社員の紹介、連絡事項を伝え、全員で自社開発の脳活性化プログラム「シナプソロジー」を5分ほど行う。インストラクターの指示のもと、声を出しながら手足などを軽く動かす。脳に適度な刺激を与え、心身を活性化するという。全体朝礼とは別に、各部署、各クラブでは毎日10分の朝礼を実施し、挨拶や身だしなみチェック、個々の社員の業務予定や必要な情報を共有。

 05年に入社した山本雅子さんは健康経営推進部で営業に関わる。全体朝礼では社長のすぐ近くで話を聴く。「社員全員が話を真剣に聴く姿を見ることで、一体感を感じる」(山本さん)。シナプソロジーは、普段あまり接点のない社員と話すきっかけになるという。「朝礼は、社員間の発言量を増やし、コミュニケーションを活性化させる効果がある」(同)

 朝礼を「時代錯誤」と退ける向きがあるが、実は社員の帰属意識を高める有効なマネジメントである。日本の企業はこの意識に目を向けることができていないがゆえに、労働生産性が低い。「働き方改革」で真っ先に議論されるべきことが、これらの企業の朝礼にあるのではないだろうか。(ジャーナリスト・吉田典史)

AERA 2019年2月18日号より抜粋