「ワクチンの抗体が弱まっていると、はしかや水ぼうそうなどへの感染が命にかかわることがあり、再接種が必要です」(加藤医師)

 現在は、再接種は公費助成が不十分なことと、予防接種法の適応外になっているため、副反応が起きたときの被害者救済の仕組みなどが整っていない。そのため、再接種が必要な人も十分に打てていないという。

 さらに、長期入院により体力も低下しており、罹患すると重症化しやすい。年末年始にインフルエンザにかかった江田さんの娘も肺炎になりかけ、治るまでに1カ月近くかかった。感染症などへの心配から現在も学校に通えず、自宅で療養している。

「もともと活発で外遊びが大好きな子。節分のときも地域のイベントに行きたいと泣いて怒っていました。つらい治療を頑張って生き抜いてきた娘が別の病気で亡くなってしまわないよう、きちんと再接種して、また元気に外で遊ばせたい」(麗奈さん)

 ただ、接種費用を全額自己負担するとなると大変だ。江田さんたちは長期入院への付き添いや自宅療養の見守りで1年近く、夫婦どちらかが仕事を休んでいる状況で、一家の収入は激減した。麗奈さんは言う。

「患者家族は経済的なダメージも大きい。病気で頑張っている子どもたちが、どこに住んでいても再接種を受けられ、安心して暮らせるように、いつかは助成が全国に広がってほしい」

 加藤医師は言う。

「小児がんの治療が進歩し、80%を超えて治る時代になりました。治癒率を上げるだけでなく、治療が終わった後の生活の質を向上させる取り組みも重要です」

(編集部・深澤友紀)

AERA 2019年2月18日号