「偉大だ。ほんとに偉大。おめでとう。素晴らしい」

 大統領が執着するメキシコ国境の壁建設をめぐる予算案の成立を阻まれて、政府機関の一部が約5週間の閉鎖に追い込まれるなど、ねじれ議会の苦しみを早々に味わった大統領。それだけに、今回の一般教書演説は、「超党派」や「団結」の重要性を訴えることが目的だった。

「国民は二大政党としてではなく、一つの国としての統治を望んでいる。今夜掲げる政策課題は、共和党や民主党の課題ではなく、米国民のためのものだ」

 そう呼びかけて始まった演説では、共和党でも民主党でもなく、国民のために働く大統領であることを印象づけようとする大統領の姿があった。だからこそ、トランプ大統領の下に一致団結することが米国のためになるというのが根本的なメッセージで、団結に向けた大統領側の譲歩を期待させる姿勢は感じられなかった。

 実際に今回の演説内容は、昨年の一般教書演説と大きくは変わらない。実績を強調するためのデータを大幅補強したくらいで、現政権の政策を称賛しまくるトランプ節も、自国第一主義に基づく政策方針にも変化は見られなかった。大きく変わったのは、青から赤に替わったネクタイと、口癖だった「Make America Great Again(米国を再び偉大に)」のスローガンが消えたこと。そして、2020年の大統領選再選に向けた選挙戦略が今まで以上に強くみられたことだった。

 いま、米国の政治で最も勢いがあるのは大統領自身でも民主党でもない。女性たちだ。女性蔑視発言などで知られるトランプ大統領の誕生以降、今も続く抗議行動の原動力になっている。その力が中間選挙で爆発し、過去最多の女性議員を当選させて、「ねじれ議会」につながった。
 トランプ大統領にとって、まさにアキレス腱(けん)である女性の支持を掘り起こせるかどうかが、議会との関係でも大統領再選でも大きなカギとなる。それゆえに「女性の活躍」で盛り上がった一般教書演説は、今後の作戦を立てるうえで収穫だったとみられる。演説で大統領は、女性がさらに活躍する機会を広げる政策を約束した。女性を念頭においた政策のクローズアップが今後増えるのは間違いない。

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一方で大統領は…