この国の将来の姿を大きく変えるかもしれない法律が、昨年末にできた。外国人労働者受け入れのドアを大きく広げる改正出入国管理法(改正入管法)が国会で成立し、今年4月に施行される。事実上の「移民受け入れ」だと考える人も多く、さまざまな議論を積み残したまま、日本政府は前に踏み出そうとしている。毎月話題になったニュースを子ども向けにやさしく解説してくれている、小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』に掲載された記事を紹介する。

工事機材の準備をするベトナム人の技能実習生(神奈川県) (c)朝日新聞社
工事機材の準備をするベトナム人の技能実習生(神奈川県) (c)朝日新聞社
建設現場で日本人の作業員(左)から指導を受けるベトナム人の技能実習生(神奈川県) (c)朝日新聞社
建設現場で日本人の作業員(左)から指導を受けるベトナム人の技能実習生(神奈川県) (c)朝日新聞社
メロン農家で働くフィリピン人の技能実習生(愛知県) (c)朝日新聞社
メロン農家で働くフィリピン人の技能実習生(愛知県) (c)朝日新聞社

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 新しい入管法では、外国人が働くことができる業種を今までよりも増やし、より簡単な仕事をする人材を受け入れることができるようになる。これまで日本は、高い技術や熟練の必要がないような「単純労働」をする外国人は原則、受け入れないことにしていたが、その建前が大きく変わることになる。

 法律ができた背景にあるのは、日本の人口減少と少子高齢化だ。生まれる子どもの数は年々少なくなっており、それに伴って働き手となる世代も今後、減り続ける。建設業や農業、介護など多くの業界で人手不足が深刻になっており、労働者をもっと海外から呼び込みたいという声が上がっていた。

 実は今も、単純労働をしている外国人たちは日本に数多くいる。店などで働く人の名札に、外国の名を見たことがある人は多いだろう。多くが、日本語学校や専門学校などで学びながら、アルバイトで働く留学生だ。

 また、日本の進んだ技術を学ぶ目的で来日する外国人技能実習生たちを、多くの工場や農家などで実質的な労働力として使っている。本来は働くことが主目的ではない外国人を「労働者」にしているわけで、低すぎる賃金や長時間労働などの劣悪な条件で働かされる問題も数多く起きている。

 今回の法改正は、このように「裏口」から入れていた外国人労働者を「表玄関」から入れようとするものといえ、その点では一歩前進だという評価もある。

■政府は「労働力」と言うが、日本はすでに「移民社会」

 だが、この法律には重大な問題点がある。まずは、どんな技能を持った人を、どの業界に何人受け入れるのか、具体的な中身が詰められていないことだ。外国人の単純労働者受け入れは、日本の社会と経済に大きな影響を与えるにもかかわらず、重要な点については政府が今後、自由に決められるというのだ。

 もう一つの大きな問題は、日本で生活する外国人を社会に受け入れる方策を法律に明記せず、力を入れているように見えない点だ。外国から来た人が日本で暮らすには、日本語教育や生活支援、子育てのサポートなどが必要になる。言葉や文化、習慣の違う人たちを社会の一員として迎えるための手助けは、外国人を受け入れる際に、最も大切なことの一つだと考えられている。

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AERA編集部
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