もしがんになったら、免疫療法を希望するか、という質問には、「希望しない」が約9%、「どちらともいえない」が約27%だったのに対し、「希望する」は約65%を占めた。内訳は「保険診療対象のみを希望」が42%、うち「免疫チェックポイント阻害薬に限り希望」が約4割を占めた。その理由を見ていくと、「エビデンス」を根拠にしていることがわかった。「自費診療も含む免疫療法を希望する」も22.8%いて、ここでも「エビデンス」という条件を付け、「できることは何でもしたい」(内科・60代・男性)という意見も目立った。医師もやはり、がんを恐れる一人の人間ということだ。

 衝撃的なのは、がんになった場合の病院の選び方だろう。

 最新医療といえば大学病院を連想する人は多いだろう。だが、医師に病院選びで重視する指標を尋ねたところ、「がんの専門病院」が半数を占め、以下、「友人医師の勤務する病院」「名医のいる病院」「自分の勤務する病院」「大学病院」の順に続いた。

 理由は明快で、「手術数、症例数が多い」(呼吸器外科・20代・男性、ほか多数)、「専門家がいるから」(消化器内科・40代・男性、ほか多数)、「専門治療が望ましいから」(麻酔科・30代・男性)と、症例数や専門性を重視していることがわかる。

「大学病院はその時の科の教授の専門領域によってスタッフに偏りが出る場合があり、必ずしも自分がかかったがんの知見が多いとは限らない。そうした事情を鑑みた医師が多いのかもしれません」(石見医師)

 医療ガバナンス研究所の上昌広医師は、背景をこう指摘する。

「2000年代に入り、各病院の患者数や手術数が公表されるようになってから、こうした傾向が顕著になりました。専門病院は症例数が圧倒的に多くレベルも高く、医療ミスも少ないと多くの医師が感じているということだと思います」

 がんの専門病院は都市部に偏っている。地方在住の場合、どう考えればよいのか。

「がん専門病院は国立がん研究センターやがん研有明病院、大阪国際がんセンターなどが有名ですが、各県にひとつはがん拠点病院があります。もちろん、大学病院の症例数が圧倒的な地域もあります」(上医師)

 がんになったら、どうするか──。迷ったときは、主治医に「自分ならどうするか」とその理由を尋ねてみると、参考になるだろう。(編集部・澤志保)

AERA 2019年2月11日号より抜粋