モタハリ副議長は「アジア王者になれる可能性もあったチームが、精神面と心理面、倫理観の弱さにより、その機会を逃した」とも指摘したという。

 イラン選手による乱闘騒ぎについては吉田選手も会見で触れている。同じ宿舎のエレベーター内で一緒になったイラン選手から謝罪を受けたことを明かし、「スポーツマンシップ、フェアプレーを象徴するできごと」だと、むしろ好意的に紹介した。「愚行発言」は、むしろ準決勝のもう一試合に向けられているように感じた。

 アジアカップ開催国のアラブ首長国連邦(UAE)に、次のW杯開催国のカタールが4-0で圧勝した試合だった。その後、決勝戦で日本を3-1で下し、初優勝を飾ったカタールだが、実はアジアカップ開幕前から悪い意味での主役だった。

 17年6月以降、UAEはカタールと国交断絶状態にあるだけに、代表チーム以外のカタール人の入国を拒否。アジアサッカー連盟(AFC)の仲裁で、チーム関係者や一部メディアの入国はしぶしぶ認めたが、サポーターの入国は認められなかった。

 その両国が決勝進出をかけた大一番で対戦するとあって、UAEの王子がチケットを買い上げ、忠誠心の強いサポーターに無料で配布。スタジアムはUAEサポーターで埋まり、激しい敵意に満ちた雰囲気となった。

 キックオフ前のカタールの国歌斉唱は大きなブーイングでほとんど聞こえない。試合が始まると、ピッチに向かって靴や液体の入ったペットボトルが繰り返し投げ入れられ、複数のカタール選手にぶつかるなど、もはや試合続行は不可能とも思える、ひどい状態だった。投げ入れられたペットボトルがピッチに散乱する中での試合は、サッカーの光景ではなかった。そうした侮辱にも耐え、気持ちを切らさずに大会を初優勝で飾ったカタールの選手たちは、まさにアジア王者にふさわしかった。

 中東の衛星テレビ局アルジャジーラによると、UAEでは、カタールに同情すると最長15年の刑期に値する罪の対象になるという。カタールを拠点とするアルジャジーラも、UAEでは放送遮断となるなど敵視の対象にされている。

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イランとサウジアラビアの対立が背景に…