にもかかわらず、泣いてしまったのは、どの曲も細かな思い出と重なったからだ。一つは小学生のとき。転任する先生のあいさつを不思議に感じたことがあった。中学に入ってからクイーンの「手をとりあって」の歌詞について語っていたことに気づき、先生の思いが腑に落ちた記憶がよみがえったという。

 10~20代の回答も少なくなかった。音楽学校の授業でクイーンを教えられて以来、気になっていたという鈴木彩女(あやめ)さん(10代)は、映画を観て「フレディのように美しくてチャーミングで、いつでも超新星みたいに輝ける生き方を目指したいと思うようになった」と話してくれた。

 ブライアンの歌声が好きという杉本彩華(あやか)さん(20代)は、SNSなどを通じて同世代のクイーンファンの友人が増えた。

「曲だけでなく、クイーンのメンバーの人柄の良さや親日家の姿に強くひかれました。小さな夢ですけど、英語をもっと勉強してイギリスに行きたい。英語を生かした仕事に就くのもいいなと思ってます」

(ライター・角田奈穂子[フィルモアイースト])

AERA 2019年2月4日号