「かつては現実と理想のギャップに悩むのであれば、ほとんどの場合、理想を引き下げることで認知的不協和を解消するしかなかった。ところが、理想を変えずに、仮想現実の自分を変えるという手段を採れるようになった結果、現実と理想以上に、現実と仮想現実のギャップに悩むという新たな問題が生まれている」(堀田さん)

 加工アプリで何度も修整することで、理想の自分に近づける。あるいは仮想現実の上昇と連動して、理想すらも一段高い水準にまで引き上がる。

「現実社会の自分、理想の自分……加えて、デジタル世界の自分という視点が成立することで、人間が抱える認知的不協和が複雑化している。人間関係を新たに開拓しなくなるなど、より重症化する可能性もある」(同)

 堀田仮説のポイントはここだ。前出の女性のように、まず同じ属性の人間としか交流しなくなり、その傾向が強まっていくと、他人との交流もすべてシャットダウンする事態に陥ることがあり得るという。引きこもりのような状態だろうか。(ライター・我妻弘崇)

AERA 2019年2月4日号より抜粋