「信金のヨコの繋がり」で被災地を走り回った新宮信金の移動型ATM
「信金のヨコの繋がり」で被災地を走り回った新宮信金の移動型ATM

 2018年7月、西日本を集中豪雨が襲った。各地の河川は氾濫。浸水被害や土砂災害が発生し、200人の死者を出す甚大な被害がもたらされた。

「平成最悪の水害」とも報道された西日本豪雨から数週間後、岡山県倉敷市真備町地区を1台の青バスが走っていた。

 2018年12月18日発売のアエラMOOK『災害からお金を守る』によると、車体には「しんきんの絆により新宮信用金庫(和歌山県)から応援を頂きました 吉備信用金庫」というステッカー。一見するとどこにでもあるバスだが、人の輸送能力は非常に低い。停車すると乗車口ではなく、後部から近隣住民が中に乗り込んでいく。実は、シートに代えてATMを載せた「移動型ATM」だったのだ。

「11年9月に起きた紀伊半島豪雨被害で、店舗の通信網が断絶してしまってATMは停止。窓口の端末も使えなくなって、3日間にわたってお客様の対応が一切できなくなってしまった。そのため今後、急な災害時にも対応できるATMを搭載した移動金融店舗車の導入を検討しはじめ、16年3月から運用を開始したのです」

 こう話すのは吉備信金に当の青いバスを貸し出した新宮信用金庫経営企画部の永瀬昌彦さん。

 西日本豪雨を受けて吉備信金は真備地区の2店舗が営業不能になったという。すぐに自社で移動型ATMの導入を検討。すでに導入済みの新宮信金に参考情報を問い合わせたところ、新宮側が「これから導入するのであれば、取り急ぎ当金庫の持つ移動店舗車をお貸ししましょうか」と提案したという。

「信用金庫同士はヨコの繋がりが深いんですよ」(永瀬さん)

 この移動型ATMの利点は、携帯電話の電波さえ通じるところであれば、どこでも“営業”できる点にある。

 被災地は停電に見舞われがちだが、バスは自家発電が可能。1台4千万円と値は張るが、運用にかかるのはガソリン代と人件費くらいだ。

「被災者のお金の悩みを少しでもを解消できることを考えれば、高くもないでしょう」(同)

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