焼酎の老舗「佐多宗二商店」が世界基準に挑む クラフトスピリッツ秘話

熊澤志保AERA
 芋焼酎製造の老舗、佐多宗二商店がつくる焼酎スピリッツが、じわじわと人気を呼んでいる。なぜ、有名銘柄を抱える老舗が手掛けたのか?

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 食や酒のプロや味わった人から称賛される「山椒ハイボール」。だが、まだ多くの人には知られておらず、飲める店もそこまで多くない。

 そもそも、焼酎ベースのクラフトスピリッツ、「焼酎スピリッツ」っていったいなんだ? 

 クラフトスピリッツ「AKAYANE 山椒」のつくり手、鹿児島県南九州市の佐多宗二商店を訪ねた。

 佐多宗二商店は、「晴耕雨讀」「不二才」など、数々のヒット銘柄を抱える焼酎蔵元の老舗だ。

 どうしてそんな焼酎メーカーの老舗が、クラフトスピリッツをつくり、これほどの評価を得ているのか。代表取締役で蒸留クリエーターの佐多宗公さん(48)が経緯を教えてくれた。

「私には、日本の焼酎を世界中のバーで楽しんでもらえる、世界のスタンダードのお酒にしたいという思いがありました」

 佐多さんは、17年ほど前から自社の焼酎を売り込みに、ヨーロッパへ商談に出かけていた。だが、焼酎はなかなか売れず、期待していたほどの成果は得られなかった。それでも毎年通ってくる佐多さんに、パリの酒屋が提案してくれた。

「せっかく毎年こっちに来るんだから、蒸留所をまわってみたらどうか」

 ヒントがあるかもしれないと、紹介されたブランデーの蒸留所やワインのシャトーを回りだした。その数は10年で100軒近くにのぼるという。

「出会ったつくり手たちが異口同音に言ったのは、『この酒はこの蒸留器を使うから、この味になる』ということでした。酒質は蒸留器によるというんです。従来の日本の考え方とは、大違いでした」(佐多さん)

 焼酎づくりでは、麹に酵母を加えてもろみにし、もろみに蒸した主原料を加えて発酵させていく。このもろみにはクエン酸による強い酸味がある。蒸留によりそれを分離し、アルコール分を濃縮させたものが、焼酎の原酒だ。

「日本では、『焼酎は蒸留するから似た味になる』といわれていて、蒸留は酸味を抜くための処置のようなイメージだった」という。

 佐多さんは、蒸留に深く興味を持つようになる。

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