焼酎の老舗「佐多宗二商店」が世界基準に挑む クラフトスピリッツ秘話 (2/2) 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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焼酎の老舗「佐多宗二商店」が世界基準に挑む クラフトスピリッツ秘話

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熊澤志保AERA
「日本の焼酎を世界のスタンダードにしたい」と語る佐多宗公社長(撮影/江藤大作)

「日本の焼酎を世界のスタンダードにしたい」と語る佐多宗公社長(撮影/江藤大作)

 05年、大きな転機が訪れる。フランスのブランデーづくりの旗手、ジャン・ポール・メッテのフィリップ・トラベさんと出会ったのだ。彼は訪れた日本のつくり手をあたたかく迎え入れ、佐多さんとスタッフに自身の蒸留技術を教えてくれた。

 06年、メッテの蒸留所にちなみ、アルザス風の建屋が特徴的な「赤屋根製造所」を設立する。芋や米、麹など原材料からとことんこだわり、蒸留にもこだわったクラフトスピリッツをつくるための新しい蔵だ。

 08年にはドイツのメーカー「アーノルド・ホルスタイン」の蒸留器をオーダーメイド。焼酎づくりでは直接蒸留が常識だったところに、間接蒸留の手法を取り入れた。この蒸留器でつくった芋焼酎は、もろみの香りがダイレクトに出て、これまでにない味わいに仕上がった。

 いよいよ、確信を深めた。

──焼酎づくりでも、間違いなく蒸留がカギになる。蒸留を究めていけば、焼酎の新しい扉が開くに違いない。

 芋焼酎をベースにするのは、「麹づくりも酵母づくりも、コメも芋も日本が誇るべきクラフト」という自負があるからだ。

 現在、赤屋根製造所では9台の蒸留器が稼働。柚子、ヨモギ、お茶、生姜、山椒、ジュニパーベリー(針葉樹ネズの実)など、さまざまなクラフトスピリッツを世に送り出している。どのボタニカルを、どれくらい漬け込むか、香りが豊かに出てくるのはどれくらいのタイミングか、スタッフたちは研究を重ねて緻密なデータを取る。どの蒸留器でどれくらい蒸留するかを調整していく、地道な作業だ。

 こうした試行錯誤を経て、自慢の焼酎原酒と和歌山産の実山椒でできあがったのが、飲む人を虜にしたAKAYANE山椒だったのだ。山椒ハイボールを飲んだ時の衝撃を伝えると、佐多さんは笑顔になった。

「赤山椒や黒胡椒の焼酎スピリッツも女性に人気ですし、アブサンや季節ごとのジンも出しています。昨年つくった『AKAYANEジンハート春』と『夏』は、メッテのフィリップさんとつくった思い出のジンです」(同)

 二人の親交は蒸留を通じて深くなり、佐多さんの蔵を見学に来日したフィリップさんは「なぜ佐多がぼくのところに通ったのかが明確にわかった」と感動。ジンづくりを一緒に行うまでになっていた。昨年10月、フィリップさんは急逝した。佐多さんはフランスに駆けつけた。

「この年になって、師と呼ぶ人ができるとは思わなかった。いろいろなことを教えてもらったし、帰国する時も『これからも一緒に蒸留酒をつくっていこう』と話したばかりでした。交流は今後も続けて、少しでも何かの力になれれば。日本ならではのボタニカルを使って、日本のクラフトスピリッツを、世界に発信していきたい」(同)

(編集部・熊澤志保)

AERA 2019年1月28日号より抜粋


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