保守速報の閲覧数は約4億人に上った年もあった。運営者が高額の広告収入を得ていたのは間違いない。転機は昨年6月に訪れた。プリンター大手・セイコーエプソンの子会社のエプソン販売が「保守速報」に広告が掲載されている、との一般ユーザーからの問い合わせを機に社内で協議の上、サイトへの広告配信を停止。他企業も追随する流れを生んだ。

 同社の判断の経緯についてセイコーエプソンの広報担当者はこう説明する。

「特定の思想や信条を支持、あるいは否定していると受け取られる広告活動は行わない、との社内規定に基づき判断しました」

 掲載サイトの選定は代理店が広告主の予算やターゲット層に応じて仲介する仕組みのため、広告主の企業は把握できていないことがある。しかし、製品のブランド価値が損なわれるリスクを防ぎたい企業側の「ブランド・セーフティー」意識の高まりとともに、ネット広告の管理も問われる時代になっている。上瀧弁護士は言う。

「今回の判決は、経済的利益を目的に差別やヘイトを拡散しているサイト運営者には大きな打撃になったと思います」

 ネット上の中傷は刑事事件の処罰対象にもなっている。

 在日コリアンを親に持つ川崎市の男子高校生をネット上の匿名ブログで中傷したとして、川崎簡裁が大分市の男(66)に侮辱罪で科料9千円の略式命令を出していたことを、生徒の代理人弁護士が1月16日に会見で明らかにした。

 生徒側弁護団は、現行のヘイトスピーチ解消法は「実効性のある救済手続きが整備されていない」と法整備や捜査態勢の整備を求めている。対策強化は必須だ。(編集部・渡辺豪)

AERA 2019年1月28日号

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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