1月14日の日ロ外相会談。河野外相に向けるラブロフ外相の鋭い視線のように、ロシアの日本への姿勢は強まる一方だ (c)朝日新聞社
1月14日の日ロ外相会談。河野外相に向けるラブロフ外相の鋭い視線のように、ロシアの日本への姿勢は強まる一方だ (c)朝日新聞社
AERA 2019年1月28日号より
AERA 2019年1月28日号より

 このところ日ロ交渉ではロシアの強硬姿勢が目立っている。譲歩を重ねる日本に対し、一方的に主張を強めており、在日米軍の全面撤退を求める可能性さえある。

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 モスクワで1月14日に開かれた河野太郎外相との会談後、ロシアのラブロフ外相は単独で記者会見を開き、強い調子でロシアの立場を繰り返した。

「南クリル諸島(北方領土のロシア側呼称)でのロシアの主権を含む第2次世界大戦の結果を日本が認めなければ、どんな問題も進展は極めて難しい」

「北方領土の呼び方は容認できない」
「交渉では日米安保条約を考慮する必要がある」

 日ロの外相会談は、昨年11月に安倍晋三首相とプーチン大統領が、歯舞群島と色丹島の日本への引き渡しを記した1956年の日ソ共同宣言を基礎に交渉を加速させることで合意してから初めて。2島先行返還への期待が高まる日本側に冷や水を浴びせた格好となった。

 それでなくても最近、ロシア外務省の日本への厳しい姿勢が目立つ。昨年12月13日にはザハロワ報道官が「(ソ連が日本からの全外国軍隊の撤退を2島引き渡しの条件に加えた)60年の対日覚書を含む外交文書が交渉の基礎」と日本側を牽制した。

 モルグロフ外務次官も1月9日、駐ロシア日本大使を呼び、安倍首相が年頭の記者会見で「北方領土のロシア人住民の方々に、日本に帰属が変わることを納得していただくことも必要だ」と述べたことを、「一方的なシナリオを押しつける試みだ」などと抗議した。

 こうしたロシアの態度からは、本気で領土交渉をまとめるつもりはなく、日本から経済協力などの「果実」を引き出すために利用しているだけではないか──そんな疑念も出てくる。

 というのも、安倍首相がプーチン氏との交渉を活発化させた2016年以降、日本はロシア極東への投資拡大や北方領土での共同経済活動を打ち出し、ロシア人へのビザ発給要件も緩和。クリミア併合など欧米とロシアが対立する問題では、ロシアへの批判は抑え気味だ。

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