「オデッセイ」(2016/2018年)「カタストロフと美術のちから展」(東京・森美術館)の展示から/木奥惠三撮影(森美術館提供)
「オデッセイ」(2016/2018年)「カタストロフと美術のちから展」(東京・森美術館)の展示から/木奥惠三撮影(森美術館提供)
「安全な通行」「Reframe」(2016年)「ヨコハマトリエンナーレ2017」の横浜美術館での展示から/加藤健撮影(横浜トリエンナーレ組織委員会提供)
「安全な通行」「Reframe」(2016年)「ヨコハマトリエンナーレ2017」の横浜美術館での展示から/加藤健撮影(横浜トリエンナーレ組織委員会提供)
アイ・ウェイウェイ(左)の最新作、映画「ヒューマン・フロー 大地漂流」(東京・渋谷のシアター・イメージフォーラムほかで公開中)の1シーン。自ら難民に話しかけ、撮影をする (c)2017 Human Flow UG.All Rights Reserved.
アイ・ウェイウェイ(左)の最新作、映画「ヒューマン・フロー 大地漂流」(東京・渋谷のシアター・イメージフォーラムほかで公開中)の1シーン。自ら難民に話しかけ、撮影をする (c)2017 Human Flow UG.All Rights Reserved.

 世界的に知られるアイ・ウェイウェイ。中国当局に監視され、拘束されても発信をやめない不屈の現代美術家が、いまテーマにするのは難民問題だ。

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 アイ・ウェイウェイ(61)は1957年、北京生まれ。父は著名な詩人アイ・チンだが反共産党として文化大革命で弾劾され、ウェイウェイ自身も幼少期に労働改造所で過酷な暮らしを経験した。その後、ニューヨーク留学を経て、芸術活動を開始。人権問題など社会運動にも力を入れ、2011年には米タイム誌の「世界でもっとも影響力のある100人」にも選出されている。

 ウェイウェイと親交のあるミヅマアートギャラリー代表の三潴(みづま)末雄さん(73)は話す。

「90年代から彼は中国現代アート界で目立つ作家でした。最初から『芸術は作家の自己満足ではない。社会的・政治的問題との関わりのなかで芸術を生かす』という姿勢を貫いています」

 作品はインスタレーション、建築など多岐にわたる。08年に四川大地震で犠牲になった児童たちへの中国当局の責任を追及する活動を始めたことでマークされ、拘束も経験。12年にその状況を映したドキュメンタリー映画「アイ・ウェイウェイは謝らない」(アリソン・クレイマン監督)を公開し、話題になった。

「中国警察に殴られた瞬間をiPhoneで撮影して作品にするなど、自身が受けた迫害もしたたかに作品づくりに利用するんです」(三潴さん)

 社会的メッセージを伝えるアーティストで最近話題なのはバンクシーだ。路上で描いた壁画に億単位の値が付く。ウェイウェイの作品はどうなのか。

「大作で数億円するものもありますが、実はそんなに高くない。2015年に僕が扱った40点の写真作品は15万~20万ドル(約1600万~2200万円)でした。本人もコマーシャリズムとは無縁で、豪華な生活などにまったく興味がない。でも間違いなくバンクシーより社会的影響力は強く、歴史に名を残すでしょう」(三潴さん)

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