「訴えても訴えても国が動いてくれないのはなぜ?」

 地域を超えた共鳴の証しともいえる20万筆の電子署名と、園に寄せられた13万筆の署名。こうした民意をどうやって政治を動かすエネルギーにつなげるのかは大きな課題だ。

「政策決定や立法の過程で政府や政治家が活用できる具体案を提示していく社会のスキームが、日本では決定的に欠けています」

 こう指摘するのは、外交・政治に関する政策提言を政府、議会、メディアなどに行う特定非営利活動法人のシンクタンク「新外交イニシアティブ」(ND)の猿田佐世代表(41)だ。

 政策立案や法改正を迫る際、日本では地方自治体や業界・市民団体などが国会議員に要請や陳情の形式で「お願い」するか、デモや集会で政府を「追及」するのが一般的だ。NDは草の根の民意に寄り添う政策を立案し、立法・行政機関に反映させることに力を注ぐ。国際弁護士として米国議会でのロビイング経験もある猿田代表は言う。

「政治を動かすには具体的な内容や裏付けを含んだ提言が不可欠です」

 前出の宮城さんが暮らす宜野湾市は、「辺野古」の賛否を問う県民投票への不参加を市長が表明している。

「『普天間飛行場の固定化か辺野古移設か』という政府の設定にひきずられている。国がそう仕向けているのは見え見えなのに……」

 宮城さんはそう嘆き、住民どうしの対立が一番つらい、とこぼす。

「普天間か辺野古か」という二者択一論に陥らず普天間問題の解決策を提示する──。この命題に向き合うため、NDは安全保障や軍事の専門家も交え、普天間飛行場を管理する米海兵隊の運用実態などを検証。3年間にわたって研究を重ね、17年に「新基地を建設せずに普天間基地の撤去は可能」との政策提言書を作成した。

●結局は沖縄の声を聞く姿勢があるか否かだと悟る

 日本政府は米海兵隊の抑止力を強調し、辺野古移設を「唯一の選択肢」とするが、それは本当なのか。北朝鮮との紛争でも尖閣諸島を巡る中国との争いでも、最初に投入されるのは空軍・海軍であって海兵隊ではない。しかも日米間で合意済みの米軍再編の実施後、沖縄に残る海兵隊の実戦部隊はわずか2千人となる。これでは大規模紛争には対応できない。この残る実戦部隊は、現在、年間の半年以上、東南アジアなどを訓練で回り、沖縄にはいない。こうした実態も加味し、新基地を辺野古に造らねばならない合理的理由は軍事的にみても存在しない、と提言書は結論付けた。猿田代表はこう明かす。

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