昨年、ある外国人患者がカテーテル検査を受けた。事前に医療通訳を介して検査方法や起こりうるリスクが説明され、同意書にサインをした。

 だが、検査中、静脈から注入する造影剤が漏れる。偶発的に起きる症例だった。検査後、患者が痛みを訴え、家族は病院の責任を問う。

 ここで、昨年4月に設立された国際医療部の医療コーディネーター、二見茜さんが患者側と向き合った。携えたビデオ医療通訳のタブレット端末で、患者の母語を選ぶ。LTE回線で通訳者とつながり、家族と対話した。家族は同意文書で造影剤漏れのリスクも説明されていたことを確認すると納得した。

「医療通訳は患者へのサービスである一方で、医療スタッフをトラブルや訴訟から守る効果があります。医療費の未払いも、退院時に突然高い金額を言われて払えないというのが最も多い。あらかじめ患者が理解できる言語で概算金額を伝え、相談して解決してきました。医療通訳は、病院を守るためにも必要です」

 と二見さんは述べる。実際に東京医科歯科大では多言語の医療通訳システムを活用するようになって未収金が激減した。

 気になる医療通訳のコストだが、東京医科歯科大は通訳タブレット1台を月額4万円で契約している。定額制なので何度使ってもこの料金内。定額制の秘訣を「多くの医療機関の方々に通訳を共有していただいているからです」と開発したコニカミノルタの担当者は言う。(ノンフィクション作家・山岡淳一郎)

AERA 2019年1月21日号より抜粋