近ごろ、若者のツーブロック率の高さが気になる。また、毛先を遊ばせ、前髪を分厚く垂らし目元まで掛かるほどの奴も多く見かける。ツーブロックでパチッと髪形をキメてる奴にネット系の若手社長などが多い。この者らは皆肉食系だ。ただ、見た目と中身にさして違いはないので判別しやすいのが良い点。問題は「前髪垂らし男」である。もともとは内省的なことを表現するアーティストなどが「世界との距離」を取るために、まるでカーテンを閉めるように前髪を垂らしていたことに端を発する。ナイーブで、ナルシスティックな思想性を表していたものが、その上っ面だけを擬態する奴らが出てきた。「繊細」はモテるためのデフォルト。中身は肉食な奴がウワモノだけ化けて漁をしている。その点においては表層だけに引っ張られて、中身を見落としてほしくない。下手なマジシャンのミスディレクションは見抜いてほしい。

 髪形で「属性」を判断されたり、逆手にとってコントロールしたりする奴らが憎い。私は全てこの毛量だけで判断される。

 たまに「マキタさんって見掛けよりオシャレですね」と言われる。だから私は「人は見掛けによらない」が嫌いなのだ。

AERA 2019年1月14日号

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マキタスポーツ

マキタスポーツ

マキタスポーツ/1970年、山梨県生まれ。俳優、著述家、ミュージシャンなど多彩な顔を持つ。子供4人。スポーツ用品店だった実家の屋号を芸名に。著書に『すべてのJ-POPはパクリである。』ほか。映画「苦役列車」でブルーリボン賞新人賞受賞。近刊に『越境芸人』(東京ニュース通信社)。『決定版 一億総ツッコミ時代』(講談社文庫)発売中。

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