最近の浅草はマンションが増え、激しく変化している。

「浅草の核だった料亭文化が衰退してしまいましたが、浅草の人たちはもっと料亭文化を守るべきではなかったか──という気持ちもあります。それでも浅草で商売をやるのは楽しい。新しく来た人も一緒に協力して楽しく暮らす。街の魅力が残っているんです」

(ライター・矢内裕子)

■書店員さんオススメの一冊

 2018年12月に刊行された小説『珠玉』は、ファンタジーというジャンルを超えた作品だ。三省堂書店の新井見枝香さんは、同著の魅力を次のように寄せる。

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 伝説の歌姫、真砂リズの特別なブローチとして寄り添い続けた「黒真珠」は、孫の歩に受け継がれ、テディベアの片目となっていた。リズとは似ても似つかない風貌に生まれ、人前に立つことよりも、洋服を作る道に進んだ歩は、人形としてそばに置くことを選んだのだ。

 本来、言葉を持たない「物」が語り出せば、それはファンタジーというジャンルになり、その不思議で、ありえない設定を非現実として楽しむものになる。しかし、彩瀬まるが紡ぐ世界は、どんなに奇妙で歪でも、そうであることが必然であり、当たり前にしてしまう。

 黒真珠は、自分が天然物であるということを誇らしく思っている。自分は選ばれた存在なのだ。しかし、そんな「人ならざる」存在の黒真珠だって、彼女の手に掛かれば、ファンタジーでは終われない。

AERA 2019年1月14日号