小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『歳を取るのも悪くない』(養老孟司氏との共著、中公新書ラクレ)、『幸せな結婚』(新潮社)
小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『歳を取るのも悪くない』(養老孟司氏との共著、中公新書ラクレ)、『幸せな結婚』(新潮社)
当時、女性議員たちが柳澤厚労相に辞任要求を手渡した/2007年1月撮影(撮影/代表撮影)
当時、女性議員たちが柳澤厚労相に辞任要求を手渡した/2007年1月撮影(撮影/代表撮影)

 タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。

【「産む機械」発言をした柳澤厚労相に女性議員たちが辞任要求を手渡した】

*  *  *

 今年は亥年。前回のイノシシ年には何があったのかしらん。覚えてます?

 個人的には長男が3歳、次男がまだ1歳で、育児でてんてこ舞いでした。不安障害の治療中でもあり、大変すぎてほとんど記憶がない……。

 時は第1次安倍内閣。2007年1月4日の年頭の記者会見で安倍首相は「7月の参院選では憲法改正を争点にする」と表明。その7月の第21回参院選では「美しい国」づくりを掲げた自民党が歴史的大敗を喫し、「生活が第一」と訴えた小沢一郎代表率いる野党の民主党が第1党に。9月には安倍首相が突然の辞任を表明、福田康夫さんが第91代内閣総理大臣になりました。うわ、なんかもう、100年前のことのような気がします。

 で、この年の1月には柳澤伯夫厚生労働相の「産む機械」発言も……おお、思い出したぞ。子どもを産める年齢の女性の数は決まっている、つまり「産む機械、装置の数は決まっているから、あとは一人頭で頑張ってもらうしかない」って言って批判されたんでした。私は当時政治家の皆さまとお仕事する機会が多かったんですが「2人産んだの? じゃ日本のために、あと1人お願いね!」って笑顔で言われた時は引いたなあ。お願いねって、あなたの子じゃないし。ちなみに07年の合計特殊出生率は1.34、最新の17年は1.43です。

 時は流れ、暦が一回りしました。女性をめぐる状況も少しは良くなったのかな。試しに世界経済フォーラムが毎年発表するジェンダーギャップ指数ランキングの07年の日本の順位を調べたら、なんと91位! 前年より11も順位を下げているにもかかわらず、18年の110位より19も上です。指数だけ比べると07年は0.645、18年は0.662とわずかに改善しているのに順位がこれって、改善具合が他の国よりめちゃ遅いんじゃーん。女性の教育レベルは高いのに、政治経済分野での活躍が相変わらず少なすぎです。

 この夏の参院選では、せめて女性議員が増えますように。干支にあやかって、怯まず前進してほしいです。

AERA 2019年1月14日号

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小島慶子

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小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。共著『足をどかしてくれませんか。』が発売中

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