女子部員が続ける。

「遠征の大会になると、ホテルの先生の部屋に呼ばれて、オイルを塗った手をTシャツの下から直接入れて肩甲骨のマッサージをされるようになりました。最初は普通のことなのかと思ってたけどだんだん嫌になって、大丈夫ですって断るんですけど、『やるぞ』とか半ば無理やりでした」

 決定的な事件が起きたのは、夏の高校総体、遠征先のホテルでだった。午後11時ごろに全体ミーティングが終わったあと、女子部員は1人残るよう指示された。

「なぜか私が男の人と付き合っていて、セックスをしたみたいな噂が流れていると問い詰められました。本当に誰とも付き合っていなかったので否定していたのですが、あまりの執拗さに『付き合ってます。しました』と嘘をついたんです」

 このとき、時計の針はすでに午前2時を指していた。

「私の言葉に、先生が『陸上やめていいぞ。帰っていいぞ』と言ったので立って帰ろうとしたらいきなり前から抱きしめられて。気持ち悪いので両手をブラーンとさせてたら、その手を取られて先生の腰に回されました」

 何を勘違いしたのか、このあと秋本氏は、女子部員に直接的な表現で好意を告げるLINEを繰り返し送るようになった。

「会いたかった」

「もう来れないのか?」

「かわいい」

「大好きぞ」

 それでも女子部員は親に訴えることができなかった。秋本氏が「親には言うなよ」「自分で責任を取れ」と厳しく指導していたためだ。(編集部・大平誠)

※「日本陸連コーチがセクハラか 部員も母親も狙われた…教え子が証言」へつづく

AERA 12月31日-2019年1月7日合併号より抜粋