サンダースは、最低賃金の水準として、「時給15ドル」という目安も私に示した。

 10月、アマゾンが発表したのは、米国と英国で従業員の最低賃金を引き上げる、という内容だった。米国では、サンダースが求めていた通りの15ドル。地域によっては10ドル程度だった賃金を、大きく引き上げるものだった。

 米国で、格差批判の標的となることを強く恐れているのがいまのアマゾンだ。アマゾンが2017年9月に打ち出した「第2本社」構想で、平均15万ドルを超える年収で計5万人を雇用する話も、もともとは、米国人や米国内への貢献を大きくアピールし、米国人の共感を得るという同社の戦略の延長線上にある。

 しかし、その「第2本社」をめぐる狂騒曲は、ニューヨークとワシントン近郊という、「勝ち組」をさらに豊かにする結果となり、懸命に手を挙げていた「負け組」は置き去りにされた。アマゾンに対する米国の世論がどちらに振れるのか。それはまだ見えない。(文中敬称略)(朝日新聞記者・尾形聡彦)

AERA 2018年12月31日号-2019年1月7日合併号より抜粋