──自分という人間を音にしていった結果、ラブソングが多くなった。それはどうしてだと思いますか?

 この3年で作ってきた曲、すべてに共通するのが“愛”だったんです。「恋」も、昨年のシングル「Family Song」も。それは「YELLOW DANCER」ではあまりなかったものですね。「ばかのうた」はちょっとあったかもしれません。生活の歌を作っていくなかで、グッとくるポイントをつなぎ合わせていった時、それはたぶん愛みたいなものだったなって。でもこの3年間、何を伝えたかったのかって考えると、言葉だけでは表現しきれない愛という感情を、音楽で表現したかったんだと思います。それはアルバムの曲を半分くらい書いたあとで気付きました。あ、愛という共通点があるなって。

──興味深いのは、ラブソングを作りながら、そこに書かれているのが自分のむき出しの感情、愛情や恋心ではないところです。

 自分の感情は根底にあるんです、つらさとか、せつなさとか。そういった感情がより際立つのはどういう場面かって考えて、愛を書いた部分もあるだろうし、それを歌にすることで癒やされる、そういう形のラブソングもあるだろうし。「アイデア」には「アイ」という言葉が入っているので、愛について何か書けないかなと初めに考えていたんです。あの曲のなかで、アイデアを持って日々を乗り越えていこうって、そういう意味のことを歌っているのは、愛を持って日々を乗り越えていこうっていうのと一緒なんですよね。

──愛という点では、音楽に対する愛を歌った曲もありますね。アルバムの表題曲「Pop Virus」はまさにそういった歌で。

「POP VIRUS」というアルバムタイトルがわりと先行してるところもあるんです。タイトルが浮かんだ時、自分は小さい頃から音楽に励まされてきたけど、それは音楽のなかにあるポップウイルスに生かされてきたっていうことなんじゃないかと思って。そうやって感染したウイルスが、自分のなかで遺伝子とつながって、変容して、今は自分がポップウイルスを作る側になっている。そのウイルスはホモサピエンスが誕生した頃から、人間が武器を作り出す前から、歌として存在したのかもしれませんよね。この先もそのウイルスは広がって、人類が一度滅びたあとも、もう一度誕生した人類によって掘り起こされるかもしれない。化石化したCDが発掘されて、聴いたら音楽だったとか(笑)。そんなふうにアルバムタイトルから発想した言葉やストーリーがいくつもあって、「Pop Virus」もそれがすごく反映された一曲です。

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