今年のイグ・ノーベル賞に輝いた堀内さんの研究は、実際に広く役立っているとはいえない。痛みを抑える薬が使われ、これまでの横になったやり方でも負担を少なくできるからだ。しかし、堀内さんの研究が、「人々を笑わせ、考えさせてくれた」ことの価値は不滅だ。

 日本人受賞者の過去の研究のいくつかを、上にまとめた。どの研究も発想や内容が面白すぎて、頭の固い人からは「真面目にやれ!」と叱られそうだ。でも、こうした自由な考え方は科学だけでなく、社会の発展にも欠かせない。日本人がこの賞を多く受賞することに、私たちは誇りを持っていいと思う。

■過去の日本人受賞者のユニークな研究を紹介!

<2人の巨匠の名画をハトに見分けさせることに成功!>
1995年/心理学賞/渡辺茂(慶應義塾大学名誉教授)ほか2人
ピカソとモネの絵をそれぞれ10枚ずつハトに見せ、ピカソの絵のときにつつくと餌を与えることを繰り返すと、学習したハトはピカソのときだけつつくようになった

<バナナの皮が滑りやすいのはなぜかを解明!>
2014年/物理学賞/馬渕清資(北里大学名誉教授)ほか3人
バナナの皮を踏んだときの摩擦力を計測。皮の内側に多くあるカプセルのような小さい組織が、靴で踏まれた圧力でつぶれ、にじみ出た液体が滑りやすくすることを突き止めた

<この銅像にハトのフンがつかない理由を解明!>
2003年/化学賞/廣瀬幸雄(金沢大学名誉教授)
金沢市の名勝・兼六園にある日本武尊(やまとたけるのみこと)の銅像にハトが寄り付かず、フンがつかないのはなぜかを研究し、銅像に含まれるヒ素の成分をハトが嫌っていることを解明

<股の間からのぞくと実際より小さく見えることを証明!>
2016年/知覚賞/東山篤規(立命館大学特任教授)ほか1人
前かがみになって股の間から後ろ方向にものを見ると、実際より小さく見える「股のぞき効果」を実験で明らかにした

<イヌ語を人間の言葉に翻訳!>
2002年/平和賞/佐藤慶太(タカラトミー=当時タカラ)ほか2人
マイクから電波で本体に転送されたイヌの鳴き声をリアルタイムに音声分析、変換して液晶パネルにイヌの気持ちを文字とイラストで表示する「バウリンガル」を開発

【キーワード:イグ・ノーベル賞】
1991年に創設され、物理学、平和、医学、生物学などの部門から、毎年およそ10組が選ばれる。授賞式はアメリカのハーバード大学で開催されるが、賞金はなく、旅費も宿泊費も自分持ち。

※月刊ジュニアエラ 2018年12月号より

ジュニアエラ 2018年 12月 増大号 [雑誌]

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AERA編集部
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