ダイズやコマツナは、ミントの「おしゃべり」を「立ち聞き」すると、害虫から身を守る物質をつくることが実験でわかった。毎月話題になったニュースを子ども向けにやさしく解説してくれている、小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』に掲載された記事を紹介する。

ミントがあるときと、ないときの違い(ジュニアエラ1月号より)
ミントがあるときと、ないときの違い(ジュニアエラ1月号より)

*  *  *

 植物は動けないので、根を下ろした場所にじっととどまり、誰とも連絡を取り合わず静かに暮らしている……と思われがちだが、実は周囲のいきものとさかんにおしゃべり(=コミュニケーション)している。といっても、人間のように言葉を使うのではない。目立つ色や形の花を咲かせたり、甘い香りを出したりして、花粉を運んでくれる虫や鳥などを呼び寄せる。「色や形のおしゃべり」はすぐそばにいる虫や鳥にしか届かないが、「香りのおしゃべり」は風に運ばれて遠くの虫や鳥にも届く。今回の実験は、その「香りのおしゃべり」に注目して行われた。

■植物は静かに反撃する

 植物は害虫に対して無防備なように見えるが、実は多くの植物が、害虫にかじられると「ヤバイ!」と察知して防御作戦を開始する。(1)それ以上食べられないように、害虫がおなかをこわすようなたんぱく質を体内でつくったり、(2)害虫がいやがる香りを出したり、(3)害虫を食料にするハチなど(天敵)を呼び寄せる香りを出す。このようにして植物は身を守っているのだ。

 多くの植物は、害虫に食われて初めて自分を守るための香りをつくり始めるが、ミント(※)はいつも害虫がいやがる香りをつくって、葉にはえた毛の部分にたくわえている。害虫が葉を食べると、その香りがはじけ出るので、害虫は逃げていく。この香りは強力で、ミント自身だけでなく、周囲の植物も害虫に食われにくくするという影響を及ぼすことがわかった。

(※)ミント=シソ科の植物。和名はハッカ。葉にメントールという香りの成分を含み、この香りが害虫を遠ざける。メントールは、ガムやキャンディー、医薬品などにも使われている。

著者 開く閉じる
AERA編集部
AERA編集部

NEXTミントの周囲にダイズやコマツナを植えてわかったことは…
1 2